タクシー会社の求人にある「事故負担なし」とは、乗務中に事故を起こしたときの車両修理費などを、ドライバー個人へ負担させない制度を指すことが一般的です。
実際に、事故時の修理費や自己負担金を会社が全額負担すると明記しているタクシー会社があります。
未経験者にとって安心できる条件ですが、「事故負担なし」という言葉だけで会社を選ぶのは早いでしょう。
求人によって、
車両修理費だけ負担なし
保険の免責額も負担なし
相手方への賠償も会社の保険で対応
事故後の処理は専任担当者が対応
など、含まれる範囲が違う可能性があります。
さらに、修理費の自己負担はなくても、無事故手当や給与保証などへ影響する会社がないとは限りません。
転職前には、
「事故を起こした場合、最終的に自分のお金が何に対して発生する可能性があるのか」
まで確認することが重要です。
事故負担なしなら車両修理費を自腹で払わなくてよい会社がある
タクシーは毎日長時間、公道を走る仕事です。
どれだけ安全運転をしていても、事故の可能性を完全にゼロにはできません。
そのため、事故時の費用を会社がどこまで負担するかは重要な転職条件です。
日本交通では、全車両が任意保険へ加入しているため、事故による修理費などを社員が負担することはないと案内しています。
東栄タクシーも、事故が起きた場合は専任担当者が対応し、ドライバーの自己負担金はゼロ、すべて会社負担としています。
国際自動車も、事故時の車両修理代を全額会社負担と案内しています。
このような会社なら、
「軽くぶつけただけで数万円を給与から引かれるのでは」
という不安を減らせます。
ただし「事故負担なし」が全国共通ルールではない
タクシー運転手が仕事中に事故を起こした場合、
法律上必ず会社が全額負担しなければならない
という単純な仕組みではありません。
仕事上のミスで会社へ損害を与えたとしても、労働者が当然に全額を賠償しなければならないわけではありません。
一方で、実際の状況によっては会社から損害賠償を求められる可能性自体が完全になくなるわけでもありません。
裁判でも、
業務の内容
事故の状況
会社の事故防止対策
保険加入など損失を分散するための会社側の対応
労働者の勤務状況
などを考慮し、負担をどこまで求められるかが判断されています。
つまり、
「事故を起こしたら全部自腹」
でも、
「仕事中の事故なら法律上必ず本人負担ゼロ」
でもありません。
だからこそ、会社が独自に「事故時の自己負担なし」と明示しているかが会社選びの材料になります。
「事故1回につき○万円」と最初から決める契約には別の問題がある
労働基準法では、
「事故を起こしたら一律10万円払う」
のように、労働契約の不履行について損害賠償額をあらかじめ決めておくことは禁止されています。
たとえば、
物損事故1回5万円
車両を傷つけたら3万円
など、実際の損害とは関係なく最初から固定額を定める契約です。
一方で、このルールは、
実際に発生した損害について会社が一切請求できない
という意味ではありません。
事故時の負担を確認するときは、
「事故を起こしたら一律○万円」
なのか、
「実際の損害について個別に判断する」
のか、
「会社がすべて負担する」
のかを分けて見る必要があります。
修理費を勝手に給料から引けるわけでもない
事故で会社に損害が発生したとしても、
「今月の給与から修理代を引いておきます」
と会社が自由に処理できるわけではありません。
賃金には全額払いの原則があり、損害賠償金などを会社が一方的に給与から控除することは原則として認められていません。
ただし、個別の合意などによって扱いが変わる場合があります。
転職者が求人票を見る段階で法律論を細かく判断する必要はありません。
重要なのは、
「事故時に本人負担があるなら、何を根拠に、どのように金額が決まるのか」
を入社前に確認することです。
「任意保険加入」と「本人負担ゼロ」は同じ意味ではない
求人に、
「全車任意保険加入」
と書かれていることがあります。
これは安心材料ですが、それだけでドライバーの自己負担が完全にゼロだとは判断できません。
保険には、
相手の人身損害
相手の車や物への損害
自社車両の損害
など複数の補償があります。
さらに契約によっては免責額があります。
会社が保険へ加入していても、
保険でカバーされない部分
免責部分
自社車両の修理費
について社内で別のルールを設けている可能性があります。
そのため求人では、
「任意保険完備」
だけではなく、
「事故時のドライバー自己負担なし」
まで書かれているか確認したほうが分かりやすくなります。
「修理費負担なし」でどこまで含むか確認する
求人票で、
「事故時の修理費は会社負担」
と書かれていた場合も、確認はそこで終わりません。
たとえば事故では、
自分が乗っていたタクシーの修理費
相手車両への賠償
ガードレールなど物への賠償
乗客や相手方のけが
保険の免責額
などが発生する可能性があります。
求人の「修理費負担なし」が、
自社車両の修理費だけ
を意味するのか、
事故に伴う本人負担そのものが原則ない
という意味なのかでは違います。
会社説明会では、
「事故を起こした場合、車両修理費以外にドライバー負担になる費用はありますか」
と聞いてください。
この質問なら範囲をまとめて確認できます。
もらい事故でも負担があるのかを見る
事故にもさまざまな状況があります。
自分の不注意でぶつけた事故と、停車中に後ろから追突された事故では事情が違います。
国際自動車の採用情報でも、事故には過失事故やもらい事故などさまざまな種類があり、会社によって修理費負担の条件が異なると説明しています。
そのため、
「事故負担はありますか」
だけではなく、
「自分に過失がある事故と、もらい事故で扱いは違いますか」
と確認しておくとよいでしょう。
会社によって事故の種類別に社内規定を設けている可能性があります。
軽い接触事故まで対象なのか確認する
未経験者が心配するのは、大事故だけではないでしょう。
狭い道路でミラーをこする。
バック時にポールへ当てる。
ドアを開けたときに物へ当てる。
ホイールや車体を傷つける。
このような小さな物損事故も考えられます。
国際自動車は、ミラーをこするなどの事故についても車両修理代を会社が全額負担すると案内しています。
「事故負担なし」という会社を比べるなら、
大きな事故だけなのか
小さな車両破損も含むのか
まで確認しておくと安心です。
修理費ゼロでも無事故手当がなくなる場合は別問題
事故負担を確認するときに見落としやすいのが給与への影響です。
タクシー会社には、
無事故手当
無事故表彰
評価給
などを設けているところがあります。
たとえば名鉄タクシーは、現在の募集要項で無事故手当を給与上の手当として掲載しています。
日本交通にも無事故表彰制度があります。
そのため、
事故の修理代は本人負担ゼロ
でも、
無事故を条件とする手当や表彰へ影響する
可能性は別に考える必要があります。
どの会社で実際にどのような減額・停止があるかは、公開求人だけでは分からない場合があります。
面接で、
「事故を起こした場合、修理費以外に無事故手当や給与へ影響するものはありますか」
と聞いてください。
給与保証の条件にも事故が関係する場合がないか確認する
未経験者向けに、
6カ月30万円保証
1年間35万円保証
などの給与保証を設けている会社があります。
この保証にも会社ごとの適用条件があります。
国際自動車は、自社の給与保証条件について出勤日数以外の細かな条件は設けていないとし、他社の例として無事故などを支給条件にする場合があると説明しています。
したがって給与保証付き求人なら、
「事故を起こすと給与保証の対象外になることはありますか」
も確認しておくとよいでしょう。
事故修理代がゼロでも、保証給が変わるなら転職直後の収入に影響する可能性があります。
事故負担なしでも交通違反の反則金は別
事故費用と交通違反は分けて考える必要があります。
日本交通では、事故時の修理費について社員負担なしとする一方、交通違反の反則金は本人負担と明記しています。
たとえば、
速度違反
駐車違反
通行禁止違反
などは、事故で車両を壊した場合とは別の問題です。
そのため、
「事故負担なしの会社だから、運転中に発生するお金は全部会社持ち」
とは考えないほうがよいでしょう。
求人票や会社説明会では、
事故時の負担
交通違反時の負担
を分けて確認します。
事故を起こしたとき誰が相手と話すのかも重要
金銭負担と同じくらい確認したいのが事故処理です。
事故が発生した場合、
負傷者の救護
警察への連絡
会社への報告
など必要な対応があります。
その後、相手方や保険会社とのやり取りまで乗務員本人が行うのか、会社の担当者が対応するのかによって負担感は大きく違います。
東栄タクシーは、事故発生時に専任担当者がすべて対応すると案内しています。
タクシー未経験者なら、
「事故後は自分で相手と示談交渉するのですか」
「事故担当者はいますか」
も聞いておきたいところです。
単に費用ゼロより、事故発生後に会社がどこまで支援するかも重要です。
ドライブレコーダーの有無も確認する
事故時の責任関係を確認するうえでは、ドライブレコーダーも重要です。
事故が起きると、
信号が何色だったか
どちらが先に動いたか
相手がどのように進入してきたか
などで当事者の説明が食い違う場合があります。
東栄タクシーでは、全車へ人工知能を利用したドライブレコーダーを導入し、事故防止や事故時の対応に活用しています。
タクシー会社を選ぶなら、
前方だけか
車内も記録されるか
全車搭載か
などを見ておくとよいでしょう。
事故負担なしと安全設備が両方そろっている会社のほうが、未経験者には安心材料になります。
事故を起こした後の研修も会社選びになる
事故費用を会社が負担してくれても、同じ事故を繰り返してよいわけではありません。
会社によっては、事故後に安全運転研修や指導を行います。
これは罰則というより、再発防止のための仕組みです。
未経験者なら、
「事故を起こした乗務員への再教育はありますか」
も確認しておくとよいでしょう。
事故後に原因を振り返り、運転を修正できる会社のほうが長く働きやすくなります。
「自己負担ゼロ」でも故意や重大な問題まで無条件とは限らない
求人に「事故自己負担ゼロ」と書かれていても、
どのような状況でも永久に本人へ何も求めない
とまで意味するとは限りません。
故意に車両を壊した。
重大な社内ルール違反を繰り返した。
飲酒運転など重大な違反があった。
このような通常の交通事故とは異なるケースまで、求人の「自己負担なし」に当然含まれると考えるべきではありません。
通常の過失事故を想定した制度なのか、例外規定があるのかは会社へ確認する必要があります。
公開情報で分からなければ、推測せず社内規定を確認してください。
求人票では「事故負担なし」の周辺を見る
事故への不安が強い人は、求人票で次の項目をまとめて見ます。
| 確認する項目 | 見る内容 |
|---|---|
| 事故負担 | 修理費・免責額など本人負担があるか |
| 任意保険 | 全営業車が加入しているか |
| 事故対応 | 専任担当者がいるか |
| ドライブレコーダー | 全車搭載か |
| 給与 | 無事故手当・給与保証への影響 |
| 違反 | 反則金などの扱い |
| 事故後 | 再研修・乗務再開までの流れ |
「事故負担なし」の一行より、この表を埋めるほうが会社の対応を判断しやすくなります。
「事故費用は一切なしですか」だけでは聞き方が足りない
会社説明会で、
「事故を起こしたら自腹ですか」
とだけ聞くと、
「保険に入っているので大丈夫です」
で話が終わる可能性があります。
もう少し具体的に聞きます。
「自分に過失がある物損事故でも、車両修理費の自己負担はゼロですか」
「保険の免責額を乗務員が払うことはありますか」
「事故によって給与保証や無事故手当が変わることはありますか」
「事故処理は会社の担当者が対応しますか」
この4つを聞けば、「事故負担なし」の実際の範囲がかなり分かります。
未経験者ほど「事故を起こさない研修」も見る
事故時の自己負担がゼロなら安心ですが、本当に重要なのは事故を減らすことです。
タクシーでは、
長時間運転
乗客との会話
目的地確認
カーナビ操作
乗降場所の判断
などを同時に行います。
未経験者なら、入社前に、
実車研修があるか
同乗研修があるか
危険予測を教えるか
事故の多い場所・場面を教えるか
まで確認してください。
事故負担ゼロと安全教育の両方が整っている会社なら、単に「事故代を払わなくていい」以上の安心があります。
3社を同じ事故条件で比べる
事故負担を重視して会社を選ぶなら、候補を2~3社に絞り、同じ状況を例にして聞いてみてください。
たとえば、
「バック中に自分の不注意で営業車をぶつけ、修理費が発生した場合」
です。
そのうえで、
本人負担はいくらか
給与から引かれるものはあるか
無事故手当はどうなるか
給与保証へ影響するか
事故処理は誰が担当するか
を確認します。
これなら「事故負担なし」「保険完備」「安心の事故対応」といった求人の言葉を、同じ条件で比較できます。
事故負担なしのタクシー会社は、未経験者にとって安心できる転職条件です。
ただし、確認するべきなのは求人票に「事故負担なし」と書かれているかだけではありません。
車両修理費
保険の免責額
給与や手当への影響
事故処理
交通違反との違い
まで確認して、初めて実際の負担が分かります。
最初に候補会社へ、
「自分の過失で営業車をぶつけた場合、最終的に私が負担するお金は何がありますか」
と聞いてください。
この質問に具体的に答えてもらえれば、事故への金銭的な不安をかなり明確にしたうえで会社を比較できます。
出典
厚生労働省|仕事上のミスを理由とする損害賠償
厚生労働省|不良品を出すごとに賠償金を賃金控除することは、労基法上許されますか?
厚生労働省|労働基準法
日本交通株式会社|採用FAQ
国際自動車株式会社|タクシー採用(求人)情報のウソ?本当?
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東栄タクシー|未経験者
