道を覚えられなくてもタクシー運転手になれる?

道を覚えるのが苦手でも、タクシー運転手になることはできます。

現在のタクシーにはカーナビが普及しており、未経験者向けに地理研修や同乗指導を行う会社もあります。入社前から営業地域の道路をすべて暗記している必要はありません。

さらに、かつて一部地域で行われていたタクシー運転者向けの地理科目試験も、2024年2月29日の制度変更によって廃止されています。

ただし、「カーナビがあるから道をまったく覚えなくてよい」という仕事でもありません。

主要道路、駅、病院、繁華街、ホテルなど、よく利用する場所や道路は乗務しながら覚えていく必要があります。

転職前に見るべきなのは、自分が現在どれだけ道を知っているかよりも、「地理を覚えるまで会社がどこまでサポートしてくれるか」です。

タクシー運転手になる前に街中の道を全部覚える必要はない

タクシー運転手というと、

「細い路地まで全部知っている」

「住所を言われただけで目的地へ行ける」

というベテランドライバーを想像する人もいるでしょう。

しかし、未経験者が最初からその状態である必要はありません。

厚生労働省の職業情報でも、現在のタクシーではカーナビを利用するケースが多いとされています。

実際に日本交通は全車両へカーナビを搭載し、都内の地理に詳しくない未経験者でも応募できると案内しています。

名鉄タクシーグループでもカーナビを標準装備し、入社後の教育センターで地理研修を行っています。

つまり、

道を全部覚える
↓
タクシー会社へ応募する

という順番ではありません。

入社してから研修や実際の乗務を通じて、必要な道路を覚えていくことができます。

昔の「地理試験が難しい」という情報は現在と違う

タクシー転職について調べると、

「東京の地理試験が難しい」

「道路や交差点を大量に暗記しないとタクシー運転手になれない」

という古い情報が出てくることがあります。

現在は制度が変わっています。

東京では2024年2月29日に、タクシー運転者になるための試験から地理科目が廃止されました。

現在の東京特定指定地域では、法令・安全・接遇についての試験が行われています。

大阪や横浜地域でも、同じ2024年2月29日の制度変更に伴い地理科目の試験は廃止されています。

そのため、以前のように地理試験へ合格するため大量の道路名を暗記しなければ乗務員になれない、という制度ではありません。

ただし、地域によってタクシーセンターの講習や登録などは残っています。

応募する地域で必要な手続は会社へ確認してください。

地理試験がなくなっても地理を覚えなくていいわけではない

ここは重要です。

試験がなくなったことと、仕事で地理知識が不要になったことは同じではありません。

厚生労働省の職業情報でも、カーナビを利用することが多くなっている一方、乗客を迅速に運ぶためには地理や道路事情を知ることが重要とされています。

東京タクシーセンターでも、地理試験廃止後に新人運転者の地理知識低下を心配する事業者からの要望を受け、新人向けの地理基礎研修を設けています。

つまり現在は、

「試験に合格するために地理を暗記する」

という考え方から、

「実際の乗務に必要な地理を仕事をしながら身につける」

方向へ変わっていると考えると分かりやすいでしょう。

カーナビがあれば知らない目的地にも行ける

現在のタクシーでは、目的地をカーナビへ入力して案内を受けながら走行できます。

そのため、乗客から初めて聞く施設名や住所を指定されても、場所を検索して向かうことができます。

特に未経験者にとって、カーナビは大きな助けになります。

以前なら、

目的地を知らない
↓
地図を確認する
↓
道路を考えて走る

必要がありました。

現在は、

目的地を確認
↓
カーナビへ入力
↓
案内を参考に走行

という方法を取れます。

配車アプリと車載ナビを利用する会社なら、迎車場所についても案内を受けやすくなります。

ただしカーナビの通りに走るだけでは足りない

一方、カーナビを完全に信用して走ればよいわけではありません。

全国ハイヤー・タクシー連合会の乗務員向け学習資料でも、カーナビが示す道が必ずしも最短・最適とは限らず、乗客が希望する道を無視してナビだけに従うと苦情につながる場合があると説明されています。

たとえば乗客から、

「駅前は混むから裏道でお願いします」

「いつもの○○通りから行ってください」

と言われることがあります。

その場合は、乗客の希望を確認しながら走る必要があります。

また、

工事中
道路規制
渋滞
一方通行

などによって、カーナビが示した経路をそのまま使えないこともあります。

タクシーでは、

カーナビを使えること

と、

地理をまったく知らなくてもよいこと

は分けて考える必要があります。

最初に覚えるのは細い路地より主要道路

未経験者が営業区域の道路を一気に全部覚えようとすると大変です。

実際の会社では、よく利用する道路から覚える研修を行っています。

日本交通では、地理講習で利用頻度の高い道路を優先して教えています。

さらに営業所へ配属されたあと、ベテラン乗務員から早道・近道や利用客が多いエリアについて指導を受ける仕組みがあります。

最初から住宅街の細い道路を全部覚える必要はありません。

まず、

主要な幹線道路
主要駅
病院
ホテル
繁華街
大型商業施設
空港・新幹線駅などへの経路

を覚えていくほうが実際の営業へつながります。

乗務を繰り返すうちに、よく使う細い道路も自然に増えていきます。

道路名だけではなく「よく行く場所」を覚えると楽になる

タクシーでは、

「○○町○丁目まで」

という住所だけでなく、

「○○病院」

「○○ホテル」

「○○駅の東口」

など、施設名や乗降場所を指定されることがあります。

そのため道路名だけを暗記するより、

この病院ならこの道
この駅ならこちら側
このホテルならこの入口

という形で目的地と道路をセットで覚えるほうが実際の乗務では使いやすくなります。

配車を何度も受ける場所なら、同じ施設へ繰り返し行くこともあります。

最初はナビを使っていた場所でも、何度か走れば自然に道順が分かるようになります。

地元出身でなくてもタクシー運転手になれる

営業地域の出身者しかタクシー運転手になれないわけではありません。

実際に日本交通は、地方出身者や地理に詳しくない人を前提として地理研修を行っています。

名鉄タクシーも、未経験者向け研修の中に地理を組み込んでいます。

重要なのは、

「地元の人しか知らない道を最初から知っていること」

ではなく、

「分からない道を覚えていくことに抵抗がないか」

です。

他県から引っ越してタクシー運転手になる場合でも、研修体制のある会社なら候補になります。

道を間違えることへの不安は別に考えたほうがいい

道を覚えられないことが不安な人の中には、

「乗客を乗せた状態で道を間違えたらどうしよう」

という心配もあるでしょう。

確かに、タクシーでは経路が料金にも影響します。

そのため分からないのに知っているふりをして走るより、目的地や希望する経路を確認することが重要です。

カーナビを使用する場合も、

「こちらの経路でよろしいですか」

など、必要に応じて乗客へ確認します。

特に乗客から経路を指定された場合は、その希望を無視してナビだけに従わないことが重要です。

知らないことそのものより、「知らないのに確認しないこと」のほうが問題になりやすいと考えたほうがよいでしょう。

一方通行や右左折禁止は覚える必要がある

タクシーで必要な地理知識は、目的地までの道順だけではありません。

営業区域を走っていると、

一方通行
時間帯による通行規制
右左折禁止
進入禁止
タクシー乗り場への入り方

なども関係します。

カーナビに情報が表示される場合もありますが、実際の道路標識を確認することが最優先です。

同じ地域を何度も走れば、

「この交差点では右折できない」

「この駅は反対側から入ったほうがよい」

といった実務上の知識が増えていきます。

この積み重ねが、ベテラン乗務員との地理知識の差になります。

地理知識は売上にも関係する

道を覚えるメリットは、乗客を目的地へ運べることだけではありません。

タクシーは乗客を降ろしたあと、次の乗客を探します。

そのため、

現在どこにいるか
次にどのエリアへ向かうか
この時間ならどこに利用者が多いか

を考える必要があります。

日本交通でも、営業所の勉強会で利用者が多い地域や売上につながるルートを共有しています。

地理が分かるようになると、

目的地への経路

だけでなく、

次の営業場所への移動

も効率化できます。

つまり地理知識は、乗客対応だけでなく売上にも関係します。

配車アプリが多い会社なら未経験者は始めやすい

道への不安が強い人なら、カーナビだけでなく配車環境も会社選びで見ておきたいところです。

配車アプリから依頼を受ける場合、

乗客がいる場所
迎車先
目的地

などを端末で確認しやすくなります。

一方、流し営業の割合が高い会社では、

どこに利用者が多いか

を自分で考えて移動する場面が多くなります。

未経験者なら、

カーナビ
配車アプリ
無線配車
地理研修

がそろっている会社のほうが、知らない地域からでも始めやすくなります。

会社によって地理研修にはかなり差がある

「未経験歓迎」と書かれていても、地理研修の内容は会社によって違います。

名鉄タクシーでは、未経験者が教育センターで接客、地理、車載機器などを学び、必要であれば教育期間を延長する制度があります。

日本交通では、地理講習のあと営業所でもベテラン乗務員による同乗指導や勉強会があります。

一方、会社によっては研修期間が短く、乗務開始後は自分で覚える部分が大きい可能性もあります。

道に自信がない人ほど、

「カーナビありますか」

だけでは足りません。

研修内容まで確認したほうがよいでしょう。

道を覚えるのが苦手でも向いている人

道を一度走っただけでは覚えられなくても問題ありません。

タクシーへ比較的入りやすいのは、

ナビを確認しながら安全に走れる
分からないとき乗客へ確認できる
同じ道を何度も走れば少しずつ覚えられる
分からなかった場所をあとで確認できる

という人です。

「暗記が得意か」より、「分からない状態をそのままにしないか」のほうが重要です。

ナビがあっても慎重に考えたい人

反対に、

ナビを見ながら運転すること自体が苦手
知らない道路へ行くと極端に焦る
乗客から急に経路を指定されると運転へ集中できなくなる
道路標識や周囲の状況よりナビ画面ばかり見てしまう

という場合は、慎重に考えたほうがよいでしょう。

これは「記憶力が悪い」という問題ではありません。

安全運転と経路確認を同時にできるかという問題です。

道を覚えていなくてもナビで補えますが、安全確認までナビに任せることはできません。

道に不安があるなら4つを会社へ聞く

タクシー転職を検討していて地理だけが不安なら、会社説明会や面接で次の内容を確認してください。

確認すること聞きたい内容
カーナビ全営業車に付いているか
地理研修主要道路や施設をどの程度教えるか
同乗研修先輩を乗せて実際に営業地域を走るか
配属後地理の勉強会や相談できる仕組みがあるか

この4つが整っていれば、入社時点で地理に詳しくなくても始めやすくなります。

逆に「乗れば覚えるから大丈夫」というだけで、ほとんど研修がない会社なら、道に不安のある未経験者には負担が大きくなる可能性があります。

最初から全部覚えようとしないことが大切

道を覚えられないことが心配なら、営業区域の地図を丸暗記する必要はありません。

まず応募予定の会社へ、

「未経験で土地勘がほとんどありませんが、乗務開始前にどこまで地理を覚えますか」

と聞いてみてください。

そして、

研修で覚える範囲
乗務開始後に覚えていく範囲
カーナビや配車システムで補える範囲

を分けます。

タクシー運転手に必要なのは、「初日からすべての道を知っていること」ではありません。

カーナビを使いながら安全に走り、分からない経路は確認し、乗務を繰り返しながら主要道路や施設を少しずつ覚えていくことです。

道を覚えるのが苦手だからという理由だけで、タクシー転職を諦める必要はありません。

ただし、「ナビがあるから一生道を覚えなくてもいい」とも考えず、地理を覚えるまで支援してくれる会社を選ぶことが重要です。

出典

厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag) タクシー運転手
公益財団法人東京タクシーセンター|輸送の安全及び利用者の利便の確保に関する試験
公益財団法人東京タクシーセンター|新人地理基礎研修
公益財団法人大阪タクシーセンター|「地理」科目の試験廃止に伴う研修等の変更について
一般財団法人神奈川タクシーセンター|試験事務
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会|ハイヤー・タクシー運転者をめざす人のための学習用テキスト
日本交通株式会社|よくあるご質問
日本交通株式会社|未経験でも安心な研修制度
名鉄タクシーホールディングス株式会社|タクシードライバー未経験の方