方向音痴でも、タクシー運転手になることはできます。
現在のタクシーではカーナビや配車アプリが使われており、未経験者向けに地理研修を行う会社もあります。最初から営業地域の道路をすべて覚えている必要はありません。
ただし、「ナビがあるから土地勘はまったく必要ない」と考えるのも違います。
タクシーでは、乗客から突然目的地を指定されたり、希望する経路を伝えられたりします。ナビを使いながら、主要道路・駅・病院・繁華街などを少しずつ覚えていく必要があります。
転職前に確認したいのは、方向感覚の良し悪しより、「分からない道を確認できるか」「ナビを安全に使えるか」「乗務しながら地理を覚えていけるか」です。
最初から道を全部知っている必要はない
未経験からタクシー会社へ入る人の中には、その営業地域に詳しくない人もいます。
厚生労働省の職業情報でも、初めてタクシー運転手になる場合は研修を受け、ベテラン乗務員などから指導を受けてから乗務することが示されています。
実際にタクシー会社では、未経験者向けに、
・主要道路
・駅
・ホテル
・病院
・空港
・観光施設
・乗客が多い地域
などを学ぶ地理研修を行っています。
そのため、
「裏道まで全部覚えていないと応募できない」
という仕事ではありません。
むしろ、入社後に営業地域を覚えることを前提に未経験者を採用している会社があります。
今のタクシーにはカーナビがある
現在のタクシーではカーナビゲーションシステムが広く利用されています。
厚生労働省の職業情報でも、タクシー運転手がよく使用する機器としてカーナビゲーションシステムが挙げられています。
会社によっては全車にカーナビを搭載しています。
さらに配車アプリから注文が入った場合、
迎車場所
↓
乗客を乗せる場所
↓
目的地
をナビで確認しながら移動できることもあります。
そのため、「地図を見ただけでは東西南北が分からない」という人でも、ナビを使って営業することは可能です。
地理試験も廃止されている
以前は、東京都内など一部の地域でタクシー運転手になるために地理試験への合格が必要でした。
東京地域では2024年2月29日から地理科目が廃止され、現在の試験はタクシー事業に関する法令、安全、接遇が中心です。
横浜地域でも同じ時期に地理科目が廃止されています。
国が地理試験を見直した背景の一つには、カーナビや地図アプリが広く普及したことがあります。
つまり現在は、
「大量の道路を暗記できなければタクシー運転手になれない」
という制度ではなくなっています。
ただし、地理試験がなくなったことと、実際の営業で地理知識が不要になったことは別です。
地理試験がなくても地理研修は残っている
ここは方向音痴の人が知っておきたいところです。
東京タクシーセンターでは、地理試験廃止後も「新人地理基礎研修」を行っています。
対象は、地理に不安のある新人タクシー運転者や、これからタクシー運転者になろうとする人です。
つまり、
地理試験は不要になった
↓
しかし営業には地理知識が役立つ
↓
必要な地理は研修や実際の乗務で覚える
という形に変わっています。
国際自動車でも、地理試験廃止後も独自の地理研修を続けており、主要駅・幹線道路・高速道路・空港・主要施設などを学ぶ仕組みがあります。
「試験のために暗記する地理」から「仕事で必要な地理を身につける」方向へ変わったと考えると分かりやすいでしょう。
ナビがあっても土地勘が必要になる場面はある
カーナビがあれば目的地まで行くことはできます。
しかし、タクシーでは土地勘があるほど仕事を進めやすくなる場面があります。
例えば乗客から、
「○○駅の東口まで」
「駅前じゃなくて裏側で降ろして」
「○○通りから行ってください」
「高速を使わないでください」
と指定されることがあります。
そのたびに目的地の名称を最初から検索していると、出発まで時間がかかることがあります。
また、
駅のどちら側にタクシー乗り場があるか
病院の入口がどこか
ホテルの車寄せがどこか
右折できない交差点がどこか
といった情報は、実際に走ることで身につく部分もあります。
そのため土地勘は、
「入社する前に持っていなければならない能力」
というより、
「乗務を続けながら身につけていく仕事上の知識」
と考えたほうがよいでしょう。
最初に覚えるなら主要道路と主要施設
方向音痴の人が、営業地域の細い道路まですべて覚えようとすると大変です。
最初は骨格になる道路や施設から覚えるほうが使いやすくなります。
例えば、
主要な幹線道路
主要駅
大きな病院
ホテル
市役所などの公共施設
繁華街
高速道路の入口・出口
です。
幹線道路の位置関係が分かってくると、
「まず○○通りへ出る」
「そこから駅方面へ向かう」
という考え方ができるようになります。
細かい道は、その地域を繰り返し走りながら覚えていけばよいでしょう。
「方向音痴」と「ナビを使えない」は違う
転職前には、自分が何を苦手としているのか分けて考えてみてください。
例えば、
「一度行った道をなかなか覚えられない」
という人でも、ナビの指示を見ながら安全に運転できるのであれば、仕事を覚えていく余地があります。
一方、
「ナビを見ても現在地が分からなくなる」
「曲がる場所を過ぎるとパニックになる」
「運転中にナビへ意識が集中して周囲を見られない」
という場合は、実際の乗務で負担になる可能性があります。
タクシー運転手に必要なのは、地図を暗記する能力だけではありません。
分からなくなったときに安全な場所で確認し、落ち着いてルートを修正できることも重要です。
ナビを見すぎるのは危険
方向に自信がない人ほど、ナビ画面を頻繁に確認したくなるかもしれません。
しかし、安全運転が最優先です。
地理試験の廃止に関する国の資料でも、カーナビや地図アプリの利用時には道路交通法を守る必要があることが示されています。
走行中に画面を注視するのではなく、
出発前に大まかなルートを確認する
↓
音声案内を利用する
↓
分からなくなったら安全な場所で確認する
という使い方が基本です。
方向音痴を補うためにナビを使い、安全確認がおろそかになっては意味がありません。
道が分からないときは乗客に確認してもよい
目的地を聞いたものの場所が分からない場合、分かったふりをして走り始めるのは避けたほうがよいでしょう。
例えば、
「○○病院ですね。ナビで確認してもよろしいでしょうか」
「○○駅までは通常ルートでよろしいでしょうか」
など、必要なことを確認してから出発できます。
乗客が希望する経路を持っている場合もあります。
「いつもの道で」
「高速を使って」
「○○通りを通って」
と言われることもあるため、乗客の希望を確認することも仕事の一部です。
方向音痴だから問題なのではなく、分からないまま自己判断で走ってしまうことのほうがトラブルにつながりやすくなります。
道を間違えたときに落ち着いて対応できるかも重要
カーナビを使用していても、曲がる場所を間違えることはあります。
工事や通行止めなどで、ナビの案内どおり進めない場合もあります。
そんなときに、
「間違えた」
と焦って急な車線変更や無理な右左折をすることは避けなければなりません。
安全に走れるルートへ修正し、必要なら乗客へ状況を説明します。
タクシーでは「絶対に道を間違えない人」だけが働けるのではなく、間違えた場合にも安全を優先して対応できることが必要です。
配車アプリがある会社は未経験者には助けになる
未経験者が会社を選ぶときは、カーナビだけでなく配車方法も確認してください。
現在は、乗客がスマートフォンの配車アプリからタクシーを呼ぶ仕組みがあります。
配車が入れば、迎車場所までナビを利用して移動できます。
昔のように、
「経験だけを頼りに街を走りながら乗客を探す」
以外の営業方法も増えています。
厚生労働省の職業情報でも、位置情報を利用した効率的な配車やスマートフォンアプリによる配車が紹介されています。
方向音痴だけでなく、「どこへ行けば乗客がいるのか分からない」という未経験者にとっても、配車アプリや無線配車は一つの助けになります。
それでも土地勘が収入に関係することはある
ナビがあるから、地理をまったく覚えなくても同じように稼げるとは限りません。
例えば、
どの時間帯にどの地域へ行くか
目的地へ送ったあと次はどこへ向かうか
渋滞を避けるにはどの道路を選ぶか
といった判断には、営業地域の知識が役立ちます。
毎回ナビだけに従うより、
「この時間ならこちらの道路のほうが混みにくい」
「この施設へ行けば次の乗客を見つけやすい」
と経験から判断できるほうが効率よく営業できる場合があります。
土地勘は採用時の必須条件というより、乗務を続ける中で売上や仕事のしやすさに影響する知識と考えたほうがよいでしょう。
土地勘がない人ほど研修内容で会社を比較する
方向音痴が不安なら、歩合率や給与保証だけで会社を決めないほうがよいでしょう。
会社によって未経験者への地理教育は違います。
例えば国際自動車では、専任教官による地理研修に加え、実際に車で主要施設などへ行く路上実習や営業所配属後の指導を行っています。
大和自動車交通でも全車カーナビを備え、研修で基本的な都心地理を学ぶとしています。
転職前には次のように比較できます。
| 確認項目 | 聞くこと |
|---|---|
| カーナビ | 全車に付いているか |
| 配車アプリ | どの程度利用されているか |
| 地理研修 | 主要道路・施設を教えてもらえるか |
| 路上研修 | 実際の営業地域を走るか |
| 同乗指導 | 一人で乗る前の指導があるか |
| 乗務後 | 分からないとき相談できるか |
「方向音痴でも応募可能ですか」と聞くだけでは、会社の違いは分かりません。
どのように地理を覚えさせる会社なのかまで確認したほうが安心です。
営業地域が広い会社ほど最初の負担は変わる
地理を覚える負担は、営業する地域によっても違います。
大都市の中心部で広い範囲を走る会社と、地域の電話配車を中心に営業する会社では、覚える道路や施設の範囲が同じではありません。
地元で長年運転してきた人なら、地域密着型の会社ではこれまでの土地勘をそのまま活かせる場合があります。
反対に、知らない大都市へ転職するなら研修やナビのサポートがより重要になります。
方向音痴が心配なら、
「どの地域を主に営業しますか」
も会社説明会で確認してください。
方向音痴だからタクシーを諦める必要はない
現在のタクシーにはカーナビや配車アプリがあり、未経験者向けの地理研修を設けている会社もあります。
地理試験も見直され、東京や横浜では2024年に地理科目が廃止されています。
そのため、営業地域の道路を最初から暗記していないことだけで、タクシー運転手を諦める必要はありません。
ただし、ナビがすべて解決してくれるわけでもありません。
主要道路や主要施設を少しずつ覚え、乗客の希望する経路を確認し、分からないときに落ち着いて調べることは必要です。
応募を考えている会社があれば、
「土地勘がない未経験者に、乗務開始前と開始後でどのような地理研修をしていますか」
と聞いてください。
続けて「全車カーナビか」「配車アプリを使えるか」「路上・同乗研修があるか」まで確認すれば、方向感覚への不安だけで判断せず、自分が仕事を覚えられる環境かどうかで会社を選べます。
出典
厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag)「タクシー運転手」
国土交通省|「タクシー業務適正化特別措置法施行規則及び旅客自動車運送事業運輸規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集の結果について
公益財団法人東京タクシーセンター|輸送の安全及び利用者の利便の確保に関する試験
公益財団法人東京タクシーセンター|新人地理基礎研修
一般財団法人神奈川タクシーセンター|神奈川タクシーセンター
国際自動車株式会社|タクシードライバーの研修
大和自動車交通株式会社|採用よくあるご質問
