接客が苦手・人見知りでもタクシー運転手になれる?

接客が苦手だったり、人見知りだったりしても、タクシー運転手になることはできます。

タクシーで必要なのは、乗客とずっと楽しく会話を続ける能力ではありません。

目的地を聞く、経路の希望を確認する、停車場所を確認する、料金を案内するといった必要なやり取りを、落ち着いて行えることのほうが重要です。

実際、タクシー運転者向けの教材でも、乗車中の会話は乗客の様子に合わせ、簡潔で丁寧に行うことが基本とされています。

そのため「雑談が苦手」というだけなら、タクシー転職を諦める必要はありません。

一方、知らない人に必要事項を尋ねること自体が強い苦痛になる、クレームを受けると感情的になってしまうという場合は、仕事との相性をもう少し慎重に確認したほうがよいでしょう。

タクシーは接客業だが「話し続ける仕事」ではない

タクシー運転手は接客を伴う仕事です。

乗客を乗せたら、

目的地を聞く
経路を確認する
必要なら乗降を手伝う
料金を受け取る
忘れ物がないか確認する

といった対応があります。

厚生労働省の職業情報でも、タクシー運転手の仕事には、乗客から目的地を聞く、希望や状況に応じてルートを調整する、質問に答える、料金を受け取るといった業務が含まれています。

つまり、人とのやり取りを完全になくすことはできません。

ただし、飲食店や販売店のように、常に正面から客と話し続ける接客とも違います。

乗車中の多くの時間は前を向いて運転することになります。

雑談が苦手でも大きな問題にはなりにくい

「何を話せばいいか分からない」という人は、タクシー運転手には向かないように感じるかもしれません。

しかし、自分から無理に話題を作る必要はありません。

全国ハイヤー・タクシー連合会の運転者向け教材でも、乗車中の会話について、乗客が話したくないのか、会話したいのかなど気持ちをくみ取り、それに合わせることが示されています。

必要なのは、

「沈黙を埋めなければならない」

と考えることではありません。

乗客が静かにしているなら、必要な確認以外は静かに運転するという対応もあります。

反対に乗客から話しかけられた場合は、運転に支障がない範囲で受け答えします。

会話量を増やすことより、相手に合わせるほうがタクシーの接客には合っています。

最低限できればよい会話はかなり決まっている

接客経験がない人でも、タクシーで頻繁に使う会話はある程度決まっています。

例えば乗車時なら、

「どちらまででしょうか」

と目的地を確認します。

場所が分かれば、

「○○までですね」

と確認します。

経路に複数の選択肢がある場合は、

「ご希望の道はありますか」

と聞くことがあります。

目的地へ近づいたら、

「どちらでお止めしますか」

と停車位置を確認します。

最後に料金を受け取り、お礼を伝えます。

このような必要な会話ができれば、毎回おもしろい話題を提供する必要はありません。

人見知りと「必要な確認ができない」は分けて考える

人見知りでも、

「話しかけられれば答えられる」

「仕事としてなら挨拶できる」

「決まった内容なら聞ける」

という人は少なくありません。

このタイプなら、研修や経験によって対応に慣れていく可能性があります。

一方、

目的地を聞くことも避けたい
聞き取れなくても聞き返せない
経路が分からなくても確認できない
乗客から話しかけられると運転に集中できなくなる

という状態なら、実際の乗務で問題になりやすくなります。

特に、聞き取れなかったときに確認できることは重要です。

分かったふりをして間違った場所へ向かうより、もう一度聞くほうが安全で、乗客とのトラブルも防ぎやすくなります。

タクシーでは「話す力」より「聞く力」が重要になる

厚生労働省の職業情報では、タクシー運転手に必要なスキルとして「傾聴力」も挙げられています。

実際の仕事でも、自分が話すことより、

乗客がどこへ行きたいのか
どの道を希望しているのか
どこで降りたいのか
何を手伝ってほしいのか

を理解することが重要です。

東京タクシーセンターの新人向け接遇研修でも、コミュニケーションだけでなく「傾聴力の向上」が研修内容に含まれています。

そのため、

「自分は話し上手ではない」

という理由だけで不向きとは判断できません。

相手の話を聞き、必要なことを確認できるのであれば、タクシーに必要な接客の土台はあります。

相手の様子を見て会話量を変える

タクシーでは毎回違う人を乗せます。

乗客によって、

会話したい
仕事をしたい
スマートフォンを見たい
疲れているので休みたい

など過ごし方は違います。

そこで、自分の接客スタイルを全員に押しつけないことが重要になります。

例えば乗客が短い返事しかしていないのに、運転手側から次々と質問を続ける必要はありません。

逆に乗客から質問された場合は、分かる範囲で丁寧に答えます。

「たくさん話すこと」より、「この人は今どの程度の会話を望んでいるのか」を見るほうが実際の接客では役立ちます。

プライベートなことを無理に聞く必要もない

会話を続けなければと思うと、

「どこへ行くんですか」

「仕事は何をしているんですか」

「どこに住んでいるんですか」

など、必要以上に個人的な質問をしてしまうことがあります。

タクシー運転者向け教材でも、乗客のプライバシーに配慮し、個人的な話題を必要以上に扱わないことが示されています。

人見知りの人が、

「会話を盛り上げられない」

と悩む必要はありません。

むしろ無理に話題を探さず、目的地まで安全に送り届けることを優先できます。

接客で困りやすいのは雑談よりクレーム対応

接客が苦手な人が注意したいのは、日常的な雑談よりトラブル時です。

例えば、

「遠回りしたのではないか」

「思っていた道と違う」

「停めてほしい場所を通り過ぎた」

などと言われることがあります。

こうした場面では、相手の話を聞き、必要なら状況を説明し、自分だけで判断できない場合は会社へ相談することになります。

東京タクシーセンターの新人向け接遇研修でも、クレームにならないための対応や、実際の苦情事例が研修内容になっています。

接客が得意でなくても問題ありませんが、

「注意されるとすぐ言い返してしまう」

「相手が怒ると自分も感情的になる」

という人は注意が必要です。

酔った乗客や難しい対応が必要なこともある

特に夜間勤務では、酒を飲んだ乗客を乗せることもあります。

また、乗客によっては目的地の説明が分かりにくかったり、急いでいるため強い口調になったりすることもあります。

タクシーは一対一の接客が中心なので、人が多い店舗のようにすぐ別の店員へ交代できるとは限りません。

一方で、すべてを自分一人で解決する必要もありません。

事故や重大なトラブルなど、自分だけで判断できない場合には会社へ連絡して対応することになります。

未経験者なら、こうしたトラブル時の連絡方法まで研修している会社を選ぶと安心です。

接客は入社後に練習できる

接客経験がないからといって、最初から完成した対応を求められるわけではありません。

厚生労働省の職業情報でも、未経験でタクシー運転手になる場合は研修を受け、ベテラン乗務員などから接客技術の指導を受けることが示されています。

実際、日本交通では未経験者向け研修で接客マニュアルを学び、乗客役と乗務員役に分かれて接客の練習を行っています。

国際自動車でも、未経験者向け研修にホスピタリティや接客マナーの研修が含まれています。

人見知りが不安なら、

「未経験でも大丈夫ですか」

だけではなく、

「接客研修では実際に会話の練習もしますか」

と確認してみてください。

会話の型を決めておくと楽になる

接客が苦手な人ほど、その場で毎回言葉を考えないほうが楽です。

例えば自分の中で、

乗車
↓
挨拶・目的地確認

出発前
↓
経路確認

到着前
↓
停車位置確認

支払い
↓
料金案内・お礼

という型を決めておきます。

通常の乗務なら、この基本を繰り返すだけでも多くの場面に対応できます。

乗客から会話を求められた場合だけ、必要に応じて受け答えを増やします。

研修で会社の接客マニュアルがあるなら、まずその型を身につける方法もあります。

一人で仕事をする時間が長い点は人見知りと相性がよい場合もある

タクシーは乗客との接客がありますが、職場で常に大勢の同僚と一緒に働く仕事ではありません。

出庫後は一人で車を運転する時間が長くなります。

そのため、

「大人数の職場でずっと周囲に気を使うのが苦手」

という人には、タクシーの働き方が合う場合があります。

ただし、

「人間関係が少ない仕事」

と、

「人と話さなくてよい仕事」

は違います。

乗客との一対一のやり取りは繰り返し発生します。

会社内の人間関係を減らしたい人には合っても、知らない人との接触自体を完全に避けたい人には向かない可能性があります。

自分がどのタイプかで判断する

「接客が苦手」といっても、内容によってタクシーとの相性は違います。

苦手なことタクシーとの相性
雑談の話題を作るのが苦手大きな問題になりにくい
人前で話すのが苦手一対一が中心なので検討できる
初対面では緊張する定型的な対応から慣れられる可能性がある
聞き返すのが苦手練習が必要
必要事項を尋ねるのも苦痛慎重に検討
怒っている相手に対応できない研修・支援体制を確認
他人と同じ空間にいること自体が強い負担仕事との相性を慎重に確認

「人見知りかどうか」だけで判断するより、何ができて何が負担なのかを分けると判断しやすくなります。

会社選びでは接客研修と乗務後の支援を見る

接客に不安がある人は、給与や歩合率だけで会社を選ばないほうがよいでしょう。

確認したいのは、

確認項目聞くこと
接客研修挨拶や目的地確認を練習するか
実践練習乗客役を使った練習があるか
同乗研修一人で乗務する前に指導があるか
クレーム研修困った乗客への対応を学べるか
乗務後の相談トラブル時に営業所へ連絡できるか

特に接客未経験なら、マニュアルを渡して終わりではなく、実際に声を出して練習できる会社のほうが始めやすいでしょう。

人見知りなら「雑談できるか」ではなく必要な4場面を試す

接客が苦手だからタクシーを諦める必要はありません。

タクシーで必要なのは、乗客を楽しませる話術ではなく、必要なことを確認し、相手の様子に合わせて丁寧に対応することです。

自分にできそうか確認するなら、応募前に次の4場面を声に出して試してみてください。

「目的地を聞く」

「経路を確認する」

「停車場所を聞く」

「料金を伝えてお礼を言う」

この4つを知らない人に対しても仕事として行えそうなら、「雑談が苦手」という理由だけで候補から外す必要はありません。

逆に、この程度の必要な会話でも強い負担を感じるなら、会社説明会で接客研修の内容を確認したうえで判断したほうがよいでしょう。

応募候補を2~3社選び、「未経験者は接客をどのように練習しますか」「乗務開始後に接客で困った場合は誰へ相談できますか」と聞けば、自分が慣れていける環境か比較できます。

出典

厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag)「タクシー運転手」

一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会|ハイヤー・タクシー運転者をめざす人のための学習用テキスト

公益財団法人東京タクシーセンター|研修・検定について

公益財団法人東京タクシーセンター|新人特別接遇研修

日本交通株式会社|タクシードライバー求人サイト

国際自動車株式会社|タクシードライバーの研修