タクシー会社を選ぶとき、歩合率が高い会社ほど給料も高くなるように見えます。
同じ売上、同じ計算方法、同じ手数料条件なら、歩合率は高いほうが有利です。
例えば、歩合対象となる売上が80万円の場合、
歩合率60%なら48万円
歩合率62%なら49万6,000円
となり、2%の違いで1万6,000円の差が出ます。
しかし、実際のタクシー会社は歩合率以外の条件が同じではありません。
「最大62%」「最大68%」などと表示されていても、その歩合率になる条件が決まっていることがあります。さらに、基本給、賞与、売上を作れる環境、各種手数料なども会社によって違います。
転職先を選ぶなら、「歩合率は何%か」ではなく、「自分が現実的に作れる売上で総支給額はいくらになるか」まで確認することが重要です。
同じ条件なら歩合率は高いほうが有利
歩合給は、基本的には営業売上に応じて給料が増える仕組みです。
例えば、単純に売上へ歩合率を掛ける給与制度だったとします。
| 売上 | 歩合率58% | 歩合率60% | 歩合率62% |
|---|---|---|---|
| 60万円 | 34万8,000円 | 36万円 | 37万2,000円 |
| 70万円 | 40万6,000円 | 42万円 | 43万4,000円 |
| 80万円 | 46万4,000円 | 48万円 | 49万6,000円 |
| 90万円 | 52万2,000円 | 54万円 | 55万8,000円 |
この条件だけなら62%が最も有利です。
したがって、「歩合率は気にしなくてよい」ということではありません。
問題は、実際の求人では同じ条件になっていないことです。
「最大歩合率」だけでは比較できない
求人では、
「歩合率最大62%」
「最高歩率68%」
など、「最大」という表示を見かけることがあります。
ここでは、その数字になる条件を確認してください。
例えば平和自動車交通の採用情報では最大68%とされていますが、この68%には休日出勤時などの割増分が含まれ、勤務形態や売上実績などによって変動すると明記されています。
つまり、
A社 最大68%
B社 一律62%
という表示だけを見て、A社のほうが常に6%高いとは判断できません。
確認したいのは「通常勤務で、自分が想定する売上だった場合の歩合率」です。
何に歩合率を掛けるのか確認する
歩合率を比べる前に、その率を何に掛けるのかも確認します。
会社によっては税抜きの営業収入を基準にします。
例えば、
売上80万円(税込)
と、
歩合計算の対象80万円
が同じとは限りません。
さらに、固定給と組み合わせる会社では、
固定給+(一定の売上を超えた部分×歩合率)
という計算方法になることもあります。
この一定の売上基準は、タクシー業界で「足切り」「基準営収」などと呼ばれることがあります。
そのため、
「歩合率60%ですか?」
だけでは給与を計算できません。
「売上80万円だった場合、総支給額はいくらになりますか」
と聞くほうが実際の給料を把握しやすくなります。
歩合率より売上を作れる会社かが重要になる
歩合給では、
売上 × 歩合率
で給与が増えます。
ということは、歩合率だけでなく「売上をどれだけ作れるか」も同じくらい重要です。
単純な例で比べてみます。
A社
平均的に作れそうな売上70万円
歩合率62%
→43万4,000円
B社
平均的に作れそうな売上80万円
歩合率58%
→46万4,000円
同じ単純計算なら、歩合率が4%低いB社のほうが給料は3万円高くなります。
実際の給与計算はもっと複雑ですが、「歩合率が高い会社=稼げる会社」ではない理由はここにあります。
配車アプリ・無線・専用乗り場も給与条件の一部
売上を作れるかを見るときは、会社の営業環境を確認します。
例えば日本交通は、歩合率62%を掲げるだけでなく、配車アプリや無線配車、専用乗り場などによる乗車機会の多さも高給与につながる理由として説明しています。
大和自動車交通も、無線・アプリ配車に加え、人工知能を利用した需要予測システムを営業支援に利用しています。
つまり会社選びでは、
歩合率
×
乗客を乗せられる環境
で考えたほうが実際の収入に近づきます。
特に未経験者は、ベテランのように「何時にどこへ行けば乗客がいるか」という経験がありません。
そのため、最初は歩合率が1~2%高いことよりも、配車アプリや無線などから安定して仕事を取れる会社のほうが売上を作りやすい可能性があります。
固定給・賞与まで含めて年間で比較する
歩合率が低く見えても、固定給や賞与を組み合わせている会社があります。
例えば大和自動車交通は、
固定部分+歩合+賞与
という給与体系です。
同社自身も経験者向けの採用ページで、会社を比較するときは歩率だけでなく、
「歩率と足切り額」
「固定給+歩合給」
「賞与」
「各種手数料」
などを比べるよう案内しています。
これは会社選びでも重要な考え方です。
例えば、
A社
歩合率62%
賞与なし
B社
歩合率58%
固定部分あり+賞与年3回
という場合、歩合率だけでは年間収入の大小は分かりません。
1か月の給料だけでなく、12か月分と賞与を含めた年収で比べる必要があります。
クレジット決済などの手数料負担も確認する
タクシーでは、乗客が現金だけでなくクレジットカードやキャッシュレス決済を利用します。
会社によって給与制度や費用負担の扱いは異なるため、
「乗務員が負担する手数料はありますか」
も確認しておきたい項目です。
実際、大和自動車交通は経験者向け採用情報で「各種手数料なし」を比較ポイントとして掲げています。
愛知県西尾市の西尾交通も「各種手数料なし」を採用上の特徴として示しています。
表面上の歩合率が高くても、乗務員側の費用負担が多ければ、最終的な収入差は縮まる可能性があります。
歩合率だけでなく「給与から何が差し引かれるのか」まで聞いておきましょう。
足切りがあるなら基準額を確認する
タクシー会社の賃金制度では、一定の営業売上を基準として歩合給を計算する場合があります。
これが一般に「足切り」と呼ばれるものです。
例えば、
基準売上60万円
という給与制度なら、売上が60万円を超えた場合と下回った場合で歩合計算が変わる可能性があります。
そのため「歩合率62%」だけ分かっても、
売上50万円
売上60万円
売上70万円
で同じ62%になるとは限りません。
求人に足切り額が書かれていなければ、
「歩合率が変わる売上基準はありますか」
と確認してください。
なお、売上が一定額を超えた瞬間に歩合率が大きく上がるなど、賃金額が非連続的に増える「累進歩合制度」については、長時間労働やスピード違反を誘発するおそれがあるとして、厚生労働省が廃止すべき制度としています。
「高い売上を達成すると急に歩率が跳ね上がるからお得」とだけ考えないようにしましょう。
未経験なら給与保証の条件も見る
未経験者は、入社直後からベテランと同じ売上を作れるとは限りません。
そこで多くの会社が一定期間の給与保証を設けています。
例えば2026年10月現在、日本交通は乗務開始後3か月は月給40万円、4~12か月目は月給35万円の保証を掲げています。
日の丸交通は営業所配属後12か月間、月給30万円の賃金保証制度を設けています。
会社を比較するときは、
A社
歩合率62%・保証12か月
B社
歩合率64%・保証3か月
という違いもあります。
未経験者の場合、高い歩合率が本格的に意味を持つのは、自分で安定して売上を作れるようになってからです。
最初の数か月から1年間を考えれば、給与保証の金額や期間も重要になります。
最大歩合率より通常の売上帯で比較する
会社説明会で「歩合率は何%ですか」と聞くだけではなく、具体的な売上を使って確認すると比較しやすくなります。
例えば候補3社すべてに、
「月の営業売上が70万円だった場合の総支給額はいくらですか」
「80万円だった場合はいくらですか」
と聞きます。
すると、
| 確認する内容 | なぜ必要か |
|---|---|
| 売上70万円時の総支給額 | 通常の給与イメージを比較できる |
| 売上80万円時の総支給額 | 売上増加が給与へどう反映されるか分かる |
| 歩合の計算対象 | 税込・税抜などの違いを確認できる |
| 足切り | 売上によって歩率が変わるか分かる |
| 固定給 | 売上が低い月の収入を確認できる |
| 賞与 | 年収で比較できる |
| 手数料 | 実際の給与への影響を確認できる |
| 給与保証 | 未経験期間の収入を確認できる |
これなら「最大歩合率」の広告に引っ張られず、自分が働いた場合に近い条件で比較できます。
歩合率と同時に勤務形態も合わせる
給与を比べるときは、勤務条件も揃える必要があります。
例えば、
A社 隔日勤務・月11乗務
B社 夜日勤・月22乗務
の月収をそのまま比較しても、労働時間や働く時間帯が違います。
夜間のほうが利用客を取りやすい地域もありますし、出勤回数が多ければ売上を作れる機会も増えます。
したがって、会社説明会で給与例を聞くなら、
「隔日勤務で月11回乗務した場合」
など、自分が希望する働き方に条件を揃えてください。
会社選びは「歩合率」より「同じ売上ならいくらもらえるか」
タクシー会社の歩合率は、条件がまったく同じなら高いほど給料面では有利です。
しかし会社選びでは、歩合率だけを見ると判断を誤る可能性があります。
最大歩合率になる条件、歩合計算の対象、足切り、固定給、賞与、手数料、給与保証が会社によって違うからです。
さらに、配車アプリ、無線、専用乗り場、営業地域などによって、そもそも作れる売上が変わります。
タクシー会社を比較するときは、最初に2~3社へ、
「自分が希望する勤務形態で、月の営業売上が70万円の場合と80万円の場合、それぞれ総支給額はいくらですか」
と聞いてください。
そのうえで「給与保証終了後の新人が実際にどのくらい売上を作っているか」も確認します。
歩合率が高い会社を探すのではなく、
「自分が現実的に作れる売上で、最終的にいくら受け取れる会社か」
まで比べることが、タクシー会社選びでは重要です。
出典
厚生労働省|歩合給制とはどのような制度ですか?制度の概要や留意点を教えてください。
厚生労働省|自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部改正等について
厚生労働省|タクシー運転者の賃金制度
日本交通株式会社|タクシードライバー求人サイト
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