タクシー会社の給与保証とは、未経験で入社した乗務員がまだ十分な売上を作れない期間に、会社が一定額の給与を保証する制度です。
例えば「12か月間・月給35万円保証」であれば、乗務を始めたばかりで歩合給が35万円に届かない月でも、会社の規定を満たしていれば35万円が支給されるという仕組みです。
一方、売上から計算した給与が保証額を超えれば、保証額より多く受け取れる制度を採用している会社もあります。
ただし、転職先を選ぶときに見るべきなのは「月40万円保証」「1年間保証」という数字だけではありません。
給与保証が終わった翌月から、どのような給与体系になり、実際にいくらくらい稼げるのかまで確認することが重要です。
給与保証は未経験者の売上が安定するまでの制度
タクシーの給与は、営業売上に応じて給料が変わる歩合給を取り入れている会社が多くあります。
未経験者は入社直後から、
・どこで乗客を探すか
・どの時間帯に需要があるか
・配車アプリや無線をどう使うか
・道路や施設をどう覚えるか
などを身につけなければなりません。
最初からベテランと同じ売上を作れるとは限らないため、その期間の収入を安定させる目的で給与保証を設ける会社があります。
つまり給与保証は、
「入社すればずっとその月給がもらえる制度」
ではなく、
「仕事を覚える期間の収入を会社が一定額まで支える制度」
と考えると分かりやすいでしょう。
給与保証は歩合給にプラスされるとは限らない
給与保証で特に誤解しやすいのが、
「月給35万円保証+歩合給」
と考えてしまうことです。
例えば会社の給与保証が35万円で、その月の売上から計算した給与が30万円だったとします。
この場合、
30万円+保証35万円=65万円
になるわけではありません。
一般的には、保証によって35万円まで給与を確保する仕組みです。
反対に、歩合計算した給与が45万円になった場合、45万円を支給する会社があります。
イメージすると次のようになります。
| 歩合計算した給与 | 保証額35万円の場合 |
|---|---|
| 25万円 | 35万円 |
| 30万円 | 35万円 |
| 35万円 | 35万円 |
| 40万円 | 40万円 |
| 45万円 | 45万円 |
ただし、実際の計算方法は会社によって異なります。
求人を見るときは「保証額を超える売上を作った場合、給与はどうなりますか」と確認してください。
会社によって保証額も期間も違う
2026年10月現在、大手タクシー会社でも給与保証の内容は同じではありません。
日本交通では、未経験者について乗務開始から3か月間は月給40万円、4~12か月目は月給35万円を保証しています。
国際自動車では、研修終了後6か月間、隔日勤務で月給30万円、日勤で月給23万円の給与補償制度を設けています。
大和自動車交通では未経験者向けに12か月の給与保証がありますが、営業地域や勤務形態によって保証額が異なります。
京成タクシーウエストでは、研修終了後3か月間の月給26万4,000円保証を案内しています。
このように、
保証額
保証期間
勤務形態
営業地域
によって条件が変わります。
「1年間保証だから一番良い」と期間だけで比較しないほうがよいでしょう。
「入社から12か月」と「乗務開始から12か月」は違う
給与保証を見るときは、いつから期間を数えるのかも重要です。
タクシー未経験者の場合、入社後すぐに一人で営業を始めるとは限りません。
二種免許を持っていなければ、
入社
↓
二種免許取得
↓
社内研修
↓
営業所へ配属
↓
乗務開始
という期間があります。
この免許取得・研修中は、給与保証とは別に日給を設定している会社があります。
例えば日本交通では、配属前の研修期間中は日給1万円で、給与保証は乗務開始後からです。
大和自動車交通も研修中は日給1万円で、未経験者の給与保証は乗務開始後12か月間としています。
国際自動車も、二種免許取得などの基礎研修中は日給制で、研修終了後から6か月間の月給補償となっています。
そのため「12か月給与保証」と書いてあっても、
入社した日から12か月なのか
乗務を開始してから12か月なのか
を確認してください。
給与保証には適用条件がある場合がある
給与保証は、無条件でもらえるとは限りません。
会社によって、
・未経験者であること
・規定の乗務日数を満たすこと
・欠勤や遅刻がないこと
・会社が定める勤務を行うこと
・重大事故や勤務上の問題がないこと
などを条件としている場合があります。
実際に求人でも「給与保証・規定あり」とされている例があります。
会社によって細かな条件は違うため、
「月給40万円保証ですか」
だけではなく、
「保証を受けられなくなる条件はありますか」
まで聞いておいたほうがよいでしょう。
特に家庭事情などで休む可能性がある人は、欠勤や勤務日数が保証にどう影響するのか確認しておく必要があります。
保証期間中に売上を作る方法を覚えられる会社かを見る
給与保証の本来の意味は、保証期間だけ高い給与をもらうことではありません。
その期間に、一人で売上を作れるようになることです。
そのため会社選びでは給与保証と同時に、
・未経験者研修
・乗務開始後の指導
・配車アプリ
・無線配車
・専用乗り場
・営業データ
・需要予測システム
などを確認したほうがよいでしょう。
例えば給与保証が12か月あっても、13か月目から一人で十分な売上を作れなければ、給与が大きく下がる可能性があります。
反対に保証期間が6か月でも、その間に営業方法を身につけ、その後も安定して売上を作れる環境があれば、長期的な収入は安定しやすくなります。
一番重要なのは保証終了後の給与
給与保証付き求人を見ると、どうしても最初の保証金額に目が行きます。
しかし、転職後に長く働くなら重要なのは保証終了後です。
例えば日本交通では、現在の募集要項で13か月目以降を、
月給21万5,633円+歩合+諸手当
としています。
つまり12か月間の保証給与が終了すると、通常の歩合を含む給与体系へ移ります。
国際自動車も、通常の給与を、
月給21万8,240円~+歩合給+諸手当
としており、未経験者向けの月給補償は研修終了後6か月間です。
この「保証終了後の月給20万円台」という数字だけを見て、収入が大幅に下がると判断するのも早すぎます。
ここに営業売上に応じた歩合給が加わるためです。
結局、保証終了後の給料は、
基本部分
+
歩合給
+
各種手当
+
会社によっては賞与
で考える必要があります。
「保証終了後にいくらになるか」は売上で確認する
保証終了後の求人表記が、
「月給21万円+歩合」
だけでは、自分の収入をイメージしにくいでしょう。
その場合は会社説明会で具体的に聞きます。
例えば、
「給与保証終了後に営業売上70万円だった場合、総支給額はいくらになりますか」
「営業売上80万円の場合はいくらですか」
と同じ売上額を使って質問します。
これなら給与体系が複雑でも、実際の給与額を比較しやすくなります。
さらに、
「保証終了後の入社1~2年目の乗務員は、平均でどのくらいの売上と給与になっていますか」
まで聞くと、最高年収ではなく現実に近い数字を確認できます。
保証終了後の実例を公開している会社もある
会社によっては、給与保証が終わった後を含む新人の給与実績を公開しています。
京成タクシーウエストでは、未経験入社した複数の乗務員について、入社後の月ごとの給与例を掲載しています。
公開例では、給与保証期間を過ぎたあとに月30万円台、40万円台へ上がっている乗務員も確認できます。
もちろん、これは掲載されている特定の乗務員の実績であり、全員が同じ給与になることを保証するものではありません。
それでも、
「保証終了後に実際の新人がどうなっているか」
を公開している会社なら、転職後の収入を判断する材料になります。
求人を見るときは最高年収だけでなく、
・新人1年目の平均
・給与のボリュームゾーン
・月ごとの実例
が公開されていないか確認してみてください。
給与保証と法律上の「保障給」は別
似た言葉に「保障給」があります。
これは求人でよく見る未経験者向けの給与保証とは別です。
歩合給で働く労働者については、労働基準法により、成果が少ない場合でも労働時間に応じて一定額の賃金を保障する仕組みが必要です。
さらにタクシーなどの自動車運転者については、歩合給制度を採用する場合、固定的給与と合わせて通常の賃金の6割以上が保障されるよう保障給を定めることとされています。
一方、
「未経験者は12か月間35万円保証」
といった給与保証は、会社が未経験者向けに設けている採用・育成制度です。
この2つは名前が似ていますが同じものではありません。
保証額が高い会社ほど良いとは限らない
例えば次の2社があったとします。
A社
月給40万円保証・6か月
B社
月給30万円保証・12か月
これだけでは、どちらが自分に合うか判断できません。
さらに、
A社
保証終了後の新人平均月給30万円
B社
保証終了後の新人平均月給40万円
なら、長く働く場合の評価は変わります。
また、会社によっては保証額以上の売上を作れば、保証額を超えた給与を受け取れます。
したがって比較するなら、
| 確認項目 | 見る内容 |
|---|---|
| 保証額 | 毎月いくらか |
| 保証期間 | 何か月か |
| 開始時期 | 入社・配属・乗務開始のどこからか |
| 適用条件 | 欠勤・乗務数などの条件 |
| 上回った場合 | 歩合給との差額が支給されるか |
| 終了後 | 基本給・歩合率・賞与 |
| 新人実績 | 1~2年目の売上・給与 |
| 営業環境 | アプリ・無線・専用乗り場など |
保証額は、この中の一つにすぎません。
会社説明会では保証終了後について3つ聞く
給与保証付きの会社を検討しているなら、説明会や面接で次の3点を確認してください。
「給与保証が終わった翌月から、給与はどのような計算になりますか」
「営業売上70万円・80万円の場合、それぞれ総支給額はいくらですか」
「保証終了後の未経験入社者は、平均でどのくらいの給与になっていますか」
この3つが分かれば、
「最初の1年間は35万円」
だけではなく、
「2年目以降に自分がいくら稼げそうか」
まで考えられます。
給与保証は「終了後に一人で稼げるか」まで見て選ぶ
タクシー会社の給与保証は、未経験者が仕事を覚えるまでの収入を安定させるためには魅力のある制度です。
特に異業種から転職する人にとって、最初の数か月から1年間の生活費を計算しやすくなるメリットがあります。
ただし、保証給与はずっと続くわけではありません。
最初に確認するのは、
保証額
保証期間
保証が始まる時点
適用条件
です。
その次に必ず、
保証終了後の給与計算
新人の実際の売上
新人の実際の給与
まで確認してください。
候補のタクシー会社を2~3社選び、同じ「売上70万円・80万円」で保証終了後の給与を聞いてみると、どの会社が長期的に収入を作りやすいか比較できます。
「12か月月給40万円保証」の数字だけで会社を決めるのではなく、「13か月目以降に自分で40万円を稼げる環境があるか」まで見ることが、給与保証を使った会社選びでは重要です。
保証期間で迷うなら、期間ごとの違いを確認します。
→ 給与保証3か月・6か月・1年はどれがいい?
会社を比べるなら、給与保証の選び方を確認します。
→ 給与保証ありのタクシー会社はどう選ぶ?
出典
厚生労働省|歩合給制とはどのような制度ですか?制度の概要や留意点を教えてください。
厚生労働省|自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部改正等について
日本交通株式会社|タクシードライバー求人サイト
国際自動車株式会社|タクシードライバー 募集要項
大和自動車交通株式会社|タクシー乗務員 未経験者中途採用
京成タクシーウエスト株式会社|採用情報
