タクシー運転手は稼げない?転職前に知りたい給料の仕組み

タクシー運転手は、「稼げない仕事」と一括りにはできません。

現在の公的統計を見ると、タクシー・ハイヤー運転手などに対応する全国の年収データは450万円台です。一方で、タクシー会社の給与は売上に連動する歩合給を取り入れているところが多く、同じ会社でも乗務員によって毎月の給与が変わることがあります。

そのため転職前に見るべきなのは、「平均年収はいくらか」だけではありません。

固定給はいくらあるのか、売上が給与へどう反映されるのか、歩合の条件は何か、給与保証が終わった後はいくらになるのか。

ここまで分かって初めて、「自分の場合に稼げそうか」を判断できます。

平均年収だけを見ると「稼げない」とは言い切れない

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした年収が全国450.8万円、1時間当たりの賃金が一般労働者で1,957円と掲載されています。

少なくとも、この数字だけを見て「タクシー運転手は誰でも低収入」と判断することはできません。

ただし、450.8万円は転職後にもらえる年収ではありません。

公的統計上の職業分類に対応する平均値であり、地域、勤務形態、経験、会社、本人の売上などによる差があります。

さらに同じjob tagには、ハローワーク求人の求人賃金として月額20.9万円という別の数字も掲載されています。

「20.9万円×12カ月がタクシー運転手の年収」と考えるのも適切ではありません。

求人時に示される月額賃金と、実際に働いて歩合給や賞与などを含めて得る年間賃金は、同じ数字ではないからです。

タクシーの給料は「売上」と連動する部分が大きい

一般的な月給制の会社では、毎月決められた基本給を中心に給与が決まります。

タクシー会社の場合は、基本給などに加えて、自分が乗務して得た売上に応じて給与が増減する歩合制度を採用している会社が多くあります。

大まかな流れは、

乗客を乗せて営業する
↓
その月の営業売上が決まる
↓
会社の賃金規程に基づいて歩合給を計算する
↓
固定給・歩合給・各種手当・賞与などを合わせて給与が決まる

という形です。

ここで重要なのは、「売上=自分の給与」ではないことです。

乗務員が1カ月に70万円を売り上げたとしても、70万円をそのまま受け取れるわけではありません。

どの売上を歩合計算の対象とするのか、何%を給与へ反映するのか、固定給や賞与をどう組み合わせるのかは会社ごとの賃金規程によって変わります。

「歩合率が高い会社」だけでは給料を比較できない

タクシー求人では「高歩合」「高歩率」という言葉が目立ちます。

確かに歩合率は重要です。

しかし、歩合率だけを比較して会社を決めると、実際の給与を読み違えることがあります。

たとえば、

固定給が別にあるのか
賞与分が歩合に含まれているのか
一定売上を超えた部分だけ歩合が付くのか
歩合計算の対象となる売上はいくらなのか

によって、同じ「歩合率60%」という表示でも受取額の意味が変わる可能性があります。

転職前には「歩合率は何%ですか」だけではなく、

「月間売上が○万円だった場合、総支給額はいくらになりますか」

と給与例まで確認したほうが分かりやすくなります。

A型・B型・AB型という給与体系がある

タクシー業界では、給与体系を「A型」「B型」「AB型」などと呼ぶことがあります。

一般的には、A型は基本給などの固定部分に歩合給や賞与を組み合わせる方式、B型は売上に連動する歩合給の比重が大きい方式、AB型は両者の中間的な仕組みとして説明されます。

ただし、この呼び方だけで実際の給与を判断してはいけません。

同じA型やAB型という名称でも、基本給、歩合の計算方法、賞与への振り分け方などは会社によって異なるからです。

求人票で「AB型」と書かれていても、それだけでは自分の月収は分かりません。

最終的には、その会社の実際の給与計算方法を見る必要があります。

「完全歩合だから売上がなければ給料ゼロ」ではない

歩合給と聞いて、

「お客さんを乗せられなければ、その日の給料はゼロなのでは?」

と心配する人もいるでしょう。

雇用されて働くタクシー運転手については、単純に売上がゼロなら賃金もゼロという仕組みにはできません。

労働基準法では、出来高払制などで働く労働者について、労働時間に応じた一定額の賃金を保障するよう定めています。

また、タクシー運転者には地域別最低賃金も適用されます。

固定給と歩合給を組み合わせる会社でも、いわゆるオール歩合給の会社でも、時間当たりに換算した対象賃金が地域別最低賃金を下回らないことが必要です。

つまり、「歩合制だから最低収入のルールが何もない」ということではありません。

法律上の保障給と求人の「給与保証」は別物

ここは転職前に特に混同しやすい部分です。

歩合給で働く労働者について法律上求められる保障と、求人広告に書かれている「入社後6カ月間は月給35万円保証」といった制度は同じものではありません。

求人の給与保証は、未経験者が営業方法や地理を覚えるまでの一定期間について、会社が独自に設定している採用条件です。

実際に12カ月間の給与保証などを設けているタクシー会社もあります。

転職者にとって重要なのは、保証金額そのものよりも、その後です。

たとえば、

入社後6カ月は月給30万円保証
↓
7カ月目から通常の歩合制

という会社なら、知りたいのは7カ月目以降の給料です。

「給与保証が高い会社」ではなく、「保証終了後でも必要な生活費を確保できそうな会社」かどうかを見る必要があります。

「足切り」があるなら意味を確認する

タクシーの給与について調べると、「足切り」という言葉が出てくることがあります。

一般には、歩合給などの計算に関係する一定の売上基準を指して使われます。

問題は、足切りの金額そのものではありません。

基準へ届かなかった場合に何が起きるのかです。

歩合率が変わるのか、歩合給が付かない部分があるのか、賞与計算へ影響するのか。

ここは会社ごとに確認する必要があります。

求人票に足切り額だけ書かれていても給与は計算できません。

面接や会社説明会では、

「足切りに届かなかった月の給与例を見せてもらえますか」

と聞いたほうが、制度を理解しやすくなります。

なお、売上が一定額を超えると歩合率が段階的に急上昇するような「累進歩合制度」については、長時間労働やスピード違反などを誘発するおそれから、厚生労働省が廃止すべきものとして扱っています。

稼げるかは歩合率より「売上を作れる環境」に左右される

歩合率が高くても、売上そのものを作れなければ給与は伸びません。

そのため会社選びでは、給与表だけではなく営業環境も確認する必要があります。

タクシーの営業には、街中を走って乗客を探す方法、駅などで待機する方法、無線配車、スマートフォンの配車アプリなどがあります。

現在は位置情報を利用した配車も普及しており、乗客の探し方は以前より多様になっています。

同じ未経験者でも、

配車依頼が入りやすい会社
営業方法を研修で教える会社
需要の多い地域で営業できる会社

と、ほとんど自分で乗客を探さなければならない会社では、売上を作る難しさが変わります。

高い歩合率だけを見るより、「新人が売上を作れる仕組みがあるか」を確認したほうが実際の収入にはつながりやすいでしょう。

昼日勤・夜日勤・隔日勤務でも収入条件は変わる

勤務時間帯も売上に関係します。

昼間と夜ではタクシー需要が発生する場所や時間が異なるため、勤務形態によって売上の作り方も変わります。

ただし、「夜勤なら必ず稼げる」「隔日勤務なら高収入になる」とは限りません。

勤務できる時間、営業地域、配車件数、本人が継続できる生活リズムなどを含めて考える必要があります。

高い月収を狙えても、その勤務形態を長く続けられなければ転職として成功とはいえません。

自分が希望する勤務形態の乗務員について、実際の平均的な売上や給与例を会社へ聞くことが重要です。

手取り額を知りたいなら「月収○万円」だけでは足りない

求人に書かれている月収は、通常は税金や社会保険料などを差し引く前の総支給額として示されます。

そのため、「月収40万円」と書かれていても、40万円がそのまま銀行口座へ振り込まれるわけではありません。

手取り額は年齢、社会保険、住民税、所得税、扶養状況などによって変わります。

さらにタクシー会社では、歩合給や賞与の構成も会社によって違います。

現在の仕事の手取りが25万円必要だから、求人の「月収30万円以上可能」なら大丈夫、と単純に判断するのは避けたほうがよいでしょう。

比較するときは総支給額で統一し、その後に自分の現在の給与と比べるほうが分かりやすくなります。

転職前は5項目が分かれば給料をかなり判断できる

求人を比較するときは、会社名や最高月収よりも次の数字をそろえます。

確認項目確認する内容
固定部分売上にかかわらず支給される給与はどう計算されるか
歩合何の売上に何%を掛けるのか
足切り基準未達の場合に給与がどう変わるか
給与保証金額、期間、適用条件、終了後の給与
賞与・手当歩合とは別なのか、歩合の一部を振り分けるのか

この5つを同じ条件で2~3社に確認すると、「高歩合」という言葉だけでは見えなかった違いが出てきます。

最後は3パターンの給与例を会社に聞く

転職前に最も分かりやすい確認方法は、自分で複雑な賃金規程を読み解くことではありません。

応募先へ実際の給与例を聞くことです。

たとえば、

新人が売上をあまり作れなかった月
平均的な乗務員に近い売上の月
売上が高かった月

について、「総支給額はいくらになるのか」を出してもらいます。

さらに未経験者なら、給与保証中と保証終了後を分けて確認します。

これで、

「月給35万円保証だから安心」

から、

「保証終了後にどのくらい売上が必要で、そのとき総支給額はいくらになるのか」

まで判断できるようになります。

タクシー運転手が稼げるかどうかは、平均年収だけでは決まりません。

転職前に見るべきなのは、売上、歩合の計算方法、固定部分、給与保証終了後、そして自分が売上を作れる営業環境です。

この仕組みまで確認してから会社を比較すれば、「思っていたより給料が少なかった」という転職後のズレをかなり減らせます。

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実際の年収が気になるなら、収入の全体像を確認します。
→ タクシー運転手はいくら稼げる?給料・年収の仕組み

未経験時の収入が心配なら、給与保証を確認します。
→ タクシー会社の給与保証とは?保証終了後まで確認

高収入求人が気になるなら、求人票の見方を確認します。
→ タクシー求人の「月収50万円可能」は本当?求人票の見方

出典

厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag) タクシー運転手
厚生労働省|歩合給制とはどのような制度ですか?制度の概要や留意点を教えてください。
厚生労働省|最低賃金制度の概要
厚生労働省|最低賃金額以上かどうかを確認する方法
厚生労働省|労働基準法
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会|「令和7年賃金構造基本統計調査」によるタクシー運転者の現況