トラック運転手からタクシー運転手へ転職すると、同じ「運転の仕事」でも仕事内容はかなり変わります。
最も大きい違いは、運ぶものが荷物から人になることです。
トラックで身につけた安全運転、道路状況を読む力、長時間運転への慣れはタクシーでも活かせます。
一方で、荷物の積み降ろしが減る代わりに乗客への接客が増え、決められた荷物を運ぶ仕事から、自分で乗客を見つけて売上を作る仕事へ変わります。
「トラックがきついからタクシーなら楽そう」と考えている場合は、何が楽になり、代わりに何が負担になるのかを分けて確認してから転職を決めたほうがよいでしょう。
トラックとタクシーは同じ運転職でも仕事の中心が違う
まず違いを大きく整理すると、次のようになります。
| 比較 | トラック運転手 | タクシー運転手 |
|---|---|---|
| 運ぶもの | 貨物 | 乗客 |
| 主な相手 | 荷主・配送先 | 一般の乗客 |
| 運転ルート | 配送先に合わせる | 乗客の目的地で毎回変わる |
| 荷役 | 仕事によってあり | 基本的に大きな荷役はない |
| 接客 | 比較的少ない仕事もある | 乗客対応が毎回ある |
| 売上 | 運行・配送中心 | 自分の営業結果が売上に影響 |
| 給与 | 月給+各種手当など | 基本給+歩合などが多い |
| 必要免許 | 車格に応じた第一種免許 | 普通第二種免許 |
| 勤務 | 地場・長距離などで大きく異なる | 日勤・夜勤・隔日勤務など |
ただし、トラック運転手といっても仕事内容は幅があります。
大型長距離、地場配送、ルート配送、トレーラー、タンクローリーなどでは働き方がまったく違います。
そのため、「トラックよりタクシーのほうが楽」と一括りにはできません。
今の仕事で何が負担なのかを先に分けることが重要です。
荷物を運ぶ仕事から「人を乗せる仕事」に変わる
トラック運転手の場合、中心となるのは貨物を指定された場所へ安全に届けることです。
積荷を確認し、積み込み、荷締めをして、指定時間に配送先へ運び、荷降ろしをする仕事もあります。
タクシーでは、この荷物が乗客に変わります。
乗客から目的地を聞き、道路状況を考えながら経路を選び、安全に送り届け、料金を受け取ります。
つまり、トラックでは、
「荷物を傷つけず指定場所まで運ぶ」
ことが重要だったのに対し、タクシーでは、
「乗客を安全かつ快適に目的地へ運ぶ」
ことが中心になります。
同じ安全運転でも、急ブレーキや急加速を避けるなど、乗っている人がどう感じるかまで意識する必要があります。
手積み・手降ろしがきつい人は負担が変わりやすい
トラックからタクシーへの転職を考える大きな理由の一つが、体力面でしょう。
トラックの仕事によっては、
・手積み
・手降ろし
・荷締め
・台車作業
・フォークリフト作業
などが伴います。
タクシーでは、大量の荷物を積み降ろす作業は基本的にありません。
乗客のスーツケースをトランクへ積んだり、乗降を補助したりすることはありますが、物流現場のように何時間も荷役を続ける仕事とは異なります。
そのため、現在の仕事で手荷役の負担が大きい人なら、タクシーへ移ることで身体への負担が変わる可能性があります。
ただし、トラックでも荷役をほとんど行わない仕事があります。
例えば、パレット輸送や荷主側が積み降ろしを行う仕事から転職する場合は、「タクシーになれば大幅に体が楽になる」とは限りません。
タクシーも長時間座って運転する点は共通しています。
接客は明らかに増える
トラックからタクシーへ移ると、大きく増えるのが人とのやり取りです。
トラックでも配送先への挨拶や受付、荷主との連絡はあります。
しかし、タクシーでは乗客そのものがサービスの相手です。
目的地の確認、経路の相談、乗降場所の確認、料金の受け取りなどを、その都度行います。
乗客によっては会話をすることもあります。
ただし、話好きでなければタクシーができないわけではありません。
必要なのは、無理に会話を盛り上げることより、
「どこまで行くのか」
「希望する経路はあるのか」
「どこで停車するのか」
を間違えずに確認できることです。
人との接触をできるだけ避けたい人にはトラックのほうが合う可能性があります。
一方、一人で長時間運転することに物足りなさを感じていた人なら、タクシーのほうが合うこともあります。
「時間までに届ける」から「売上を作る」へ意識が変わる
トラック経験者が特に違いを感じやすいのがここです。
トラックでは、基本的には会社や荷主から決められた荷物と配送先があります。
運転手の役割は、それを決められた条件に従って運ぶことです。
タクシーでは、出庫しただけで自動的に同じ売上が発生するわけではありません。
駅やタクシー乗り場で待つ、道路を走りながら乗客を探す、会社からの無線配車を受ける、配車アプリから注文を受けるなどして乗客を獲得します。
そのため、
「今日はどこを走るか」
「何時ごろ、どこに乗客がいるか」
と考える必要があります。
トラックでは運行計画に沿って正確に走る力が重要ですが、タクシーでは安全運転に加えて営業の要素も入ってきます。
ここを面白いと感じるか、面倒だと感じるかで向き不向きが分かれます。
給料は「トラックからタクシーなら上がる」とは限らない
収入についても、単純にどちらが高いとは言えません。
厚生労働省の職業情報提供サイトに掲載されている2025年の全国データでは、対応する職業分類の年収は、トラックドライバーが507.2万円、タクシー運転手が450.8万円となっています。
ただし、これは全国の職業分類に対応する統計であり、転職した個人の収入を示す数字ではありません。
トラックでも、
・大型か小型か
・長距離か地場か
・夜勤があるか
・各種手当があるか
によって収入は変わります。
タクシーでも、
・営業地域
・勤務時間
・歩合率
・配車アプリや無線の強さ
・本人の売上
によって大きく変わります。
特にタクシー会社では、基本給などに加えて売上に応じた歩合制度を採用する会社が多くあります。
現在のトラック給与が毎月ほぼ一定なら、タクシーへ移ることで月ごとの収入変動を大きく感じる可能性があります。
転職前は「最高月収」ではなく、給与保証終了後の新人がどの程度の売上と給与になっているのかを確認したほうがよいでしょう。
大型免許を持っていても二種免許は別に必要
大型トラックを運転している人でも、その免許だけでタクシー営業を始めることはできません。
タクシーで乗客を有償で運ぶには第二種運転免許が必要です。
一般的なタクシーで使用するのは普通第二種免許です。
現在は第一種免許だけを持っている人を採用し、入社後に第二種免許を取得させるタクシー会社もあります。
2025年9月からは普通第二種免許の指定教習所での最低教習時限が従来の40時限から29時限へ短縮され、最短教習日数も6日から3日へ短縮されました。
そのため、大型免許を持っているから先に自費で二種免許を取るのではなく、会社負担で取得できる求人があるかを先に確認したほうがよいでしょう。
トラック経験でそのまま活かしやすいものも多い
タクシー未経験でも、トラック経験がゼロに戻るわけではありません。
特に活かしやすいのは、安全運転に関する経験です。
トラックでは、車両の大きさ、死角、停止距離、荷崩れなどを意識しながら運転してきた人も多いでしょう。
タクシーでも、事故を起こさず乗客を安全に運ぶことが最優先です。
さらに、
・長時間運転への慣れ
・道路状況を読む力
・渋滞を避ける判断
・時間管理
・車両点検
・点呼への慣れ
・事業用自動車を運転する責任感
なども共通します。
特に地元で長年トラックを運転してきた人なら、道路、主要施設、渋滞しやすい時間帯などの知識もタクシーで活かせます。
一方で、トラック経験だけでは身につきにくいのが、乗客対応と営業です。
ここは「運転経験が長いからすぐできる」と考えず、新しく覚える仕事として考えたほうがよいでしょう。
拘束時間はタクシーにすれば短くなるとは限らない
トラックの拘束時間が長いことを理由に、タクシーへの転職を考える人もいるでしょう。
ただし、タクシーへ移れば必ず勤務時間が短くなるわけではありません。
2024年4月から適用されている改善基準告示では、トラック運転者とタクシー運転者のそれぞれに拘束時間や休息期間の基準があります。
タクシーの日勤では1日の拘束時間は原則13時間以内で、延長する場合でも最大15時間です。
一方、隔日勤務では2暦日の拘束時間が22時間以内とされ、2回の隔日勤務を平均して1回21時間以内という基準があります。
つまり、隔日勤務を選ぶと1回の出勤はかなり長くなります。
ただし、その後にはまとまった休息期間があります。
トラックの長距離運行とは働き方の形が違うため、
「何時間働くか」
だけではなく、
「どのような周期で働くのか」
まで比較する必要があります。
毎日家に帰りたいなら勤務形態まで確認する
長距離トラックからの転職なら、「家で寝られる仕事にしたい」という希望もあるでしょう。
タクシーは営業所を出発し、原則として乗務終了後は営業所へ戻る働き方なので、長距離トラックのように何日も自宅を離れる働き方とは異なります。
ただし、隔日勤務では朝から翌朝近くまで勤務するケースがあります。
毎日通常の時間帯に帰宅したいのであれば、隔日勤務ではなく昼日勤などを選べる会社を探す必要があります。
「長距離運行がない」と「普通の昼勤務で毎日帰れる」は同じ意味ではありません。
転職理由が生活リズムの改善なら、求人を見るときに勤務形態を最優先で確認してください。
車両が小さくなることにも慣れが必要
大型トラックからタクシーへ移れば、車両は大幅に小さくなります。
そのため、
「普通車なら簡単だろう」
と思うかもしれません。
しかし、大型車に長年乗っている人ほど、車両感覚の違いに慣れる必要があります。
タクシーでは住宅街や繁華街に入り、道路脇で乗客を乗せたり降ろしたりする場面が多くあります。
駅前やホテル、病院など、人や自転車が多い場所にも頻繁に出入りします。
大型車とは違う注意の仕方が必要です。
運転そのものは経験を活かせても、「小さい車だから簡単な仕事」と考えないほうがよいでしょう。
トラックからタクシーへの転職が合いやすい人
現在のトラック仕事で、
・荷役作業が身体的にきつくなってきた
・長距離で何日も家を空ける働き方を変えたい
・運転の仕事自体は続けたい
・道路や運転の経験を活かしたい
・人とのやり取りが苦ではない
・自分で工夫して売上を作ることに抵抗がない
という人なら、タクシーは比較しやすい転職先です。
逆に、
・できるだけ人と話したくない
・給与が毎月変動するのが嫌
・自分で営業方法を考えたくない
・乗客を乗せて運転することに強い緊張を感じる
という場合は、トラックからタクシーへ移ることで別の負担が増える可能性があります。
転職前は「今の不満が本当に解消するか」を3社で比べる
トラックからタクシーへの転職を考えるなら、最初に「トラックを辞めたい理由」を一つ決めてください。
例えば、
「荷役がきつい」
「長距離をやめたい」
「夜勤をやめたい」
「収入を上げたい」
「60代以降も運転の仕事を続けたい」
では、選ぶタクシー会社が変わります。
そのうえで通勤可能な範囲から2~3社を選び、次の条件を同じように確認します。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 勤務形態 | 昼日勤・夜日勤・隔日勤務 |
| 給与 | 固定部分・歩合・給与保証 |
| 二種免許 | 取得費用を会社が負担するか |
| 営業方法 | アプリ・無線・乗り場・流し |
| 研修 | 接客や営業方法まで教えるか |
| 年齢 | 定年と再雇用 |
| 通勤 | 営業所まで無理なく通えるか |
例えば「長距離トラックをやめて生活リズムを整えたい」のに、隔日勤務しかできない会社へ入れば、転職目的と働き方がずれる可能性があります。
「荷役をやめたい」のが目的なら、勤務時間や給与が多少変わってもタクシーへ移る意味があるかもしれません。
転職先を探す前に、自分がトラックを辞めたい一番の理由を決めることが、会社選びの基準になります。
トラック経験は活かせるが、同じ運転仕事だと思わないほうがよい
トラック運転手からタクシー運転手への転職では、これまでの運転経験を活かせます。
安全運転、道路知識、時間管理、車両点検などは、タクシーでも役立つ経験です。
一方、仕事の中心は大きく変わります。
荷物を運ぶ仕事から人を運ぶ仕事になり、荷役作業が減る代わりに接客が増えます。
会社から与えられた配送をこなす働き方から、自分でも乗客を探し、売上を作る働き方へ変わります。
給与についても、全国統計では現在トラックドライバーのほうが高いため、「タクシーなら必ず収入が上がる」と考えないほうがよいでしょう。
まず現在の仕事について、「荷役」「長距離」「勤務時間」「人間関係」「収入」のうち、転職で最も変えたいものを一つ決めてください。
その条件がタクシーへ移ることで本当に改善するかを2~3社の求人で比べれば、「運転が好きだから」という理由だけではなく、自分にとって転職する意味があるかを判断しやすくなります。
出典
厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag)「トラックドライバー」
厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag)「タクシー運転手」
厚生労働省|トラック運転者の改善基準告示
厚生労働省|ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示
警察庁|普通第二種免許に係る教習カリキュラムの見直しについて
