配送ドライバーからタクシー運転手への転職はあり?

配送ドライバーからタクシー運転手への転職は、運転経験を活かしながら仕事内容を変えたい人には検討しやすい選択肢です。

日常的に車を運転し、点呼や車両点検、安全確認、道路状況に応じたルート変更をしてきた経験は、タクシーでも活かせます。

一方で、配送する相手が「荷物」から「乗客」へ変わるため、仕事内容は同じではありません。

荷物の積み降ろしを減らしたい人にはメリットがありますが、接客を避けたい人や、決められた配送先を順番に回る働き方のほうが気楽な人には、タクシーのほうが負担になる可能性があります。

転職するかどうかは、「配送の何がつらくて辞めたいのか」を基準に考えると判断しやすくなります。

配送経験はタクシーでも無駄にならない

配送ドライバーとタクシー運転手には共通する部分があります。

配送では、出発前の点呼や車両点検を行い、道路の混雑や通行止めなどを確認しながら目的地まで運転します。

タクシーでも出勤後に点呼や車両点検を行い、安全に乗客を目的地まで運びます。

そのため、配送経験者なら、

・長時間車を運転することへの慣れ
・安全確認
・交通状況を見たルート変更
・時間を意識した運転
・車両点検
・一人で乗務すること

などは、まったくの運転未経験者よりイメージしやすいでしょう。

ただし、配送歴があるからタクシー業務をすぐ全部できるという意味ではありません。

タクシーでは新しく覚える仕事があります。

一番大きな違いは荷物ではなく人を乗せること

配送ドライバーは、商品や荷物を指定された場所まで届ける仕事です。

タクシー運転手は、乗客を目的地まで安全に運ぶ仕事です。

この違いは大きいです。

配送なら目的地や配送順がある程度決まっている仕事がありますが、タクシーでは乗客が乗ってから目的地が分かります。

目的地を聞き、交通状況を見て経路を考え、必要に応じて乗客の希望も確認しながら走ります。

さらに料金の受け取り、忘れ物への対応、乗客からの質問、トラブルへの対応などもあります。

配送経験で培った運転技術は使えても、「乗客を乗せて運転する仕事」には改めて慣れる必要があります。

荷物の積み降ろしがつらいなら転職理由としては合いやすい

配送からタクシーへの転職を考える理由が、

「荷物の積み降ろしが体力的につらくなった」

というものであれば、タクシーは比較しやすい仕事です。

ルート配送では、荷物を車両へ積み込み、配送先で降ろし、台車などで搬入する仕事があります。空箱やコンテナを回収する仕事もあります。

タクシーでは、そのような配送貨物の積み降ろしを繰り返す仕事はありません。

ただし、身体をまったく使わないわけではありません。

乗客のスーツケースなどをトランクへ積み込んだり、乗降を手伝ったりする場面があります。

また、長時間座って安全運転を続ける別の負担があります。

「荷役作業を減らしたい」という理由ならタクシーへ移ることで仕事内容はかなり変わりますが、「体を楽にしたい」だけで決めるのは避けたほうがよいでしょう。

配送時間に追われるのが嫌でも、タクシーなら完全に解消するとは限らない

配送では、

「○時までにこの店舗へ届ける」

「午前中に○件回る」

など、配送時間を守りながら仕事を進める場合があります。

この時間指定を負担に感じる人もいるでしょう。

タクシーには、決められた配送先を何件も順番に回る仕事は通常ありません。

その点では働き方が変わります。

一方、乗客から、

「○時の電車に乗りたい」

「急いでください」

と言われる場面はあります。

渋滞していても、安全運転を優先しなければなりません。

配送の納品時間とは違いますが、時間を意識しながら運転する状況そのものが完全になくなるわけではありません。

一人で運転することが好きなら共通点は多い

配送ドライバーは基本的に一人で乗務する仕事が多く、タクシーも営業中は一人で車を動かす時間が長い仕事です。

そのため、

「オフィスで大勢と仕事をするより一人で運転するほうが楽」

という配送ドライバーなら、タクシーでも働き方の相性は確認しやすいでしょう。

ただし、タクシーには乗客が乗ります。

一人で仕事をしている時間は長くても、人との接触が少ない仕事ではありません。

配送先で担当者と短時間話す程度だった人が、タクシーへ移ると、毎日さまざまな乗客への対応が発生します。

職場の同僚との人間関係を減らしたいならタクシーは候補になります。

接客そのものをなくしたいなら、配送を続けるか別の運転職を比較したほうがよいでしょう。

決められたルートを走るのと、自分で営業するのはかなり違う

ルート配送では、決められた店舗や事業所を一定の順番で回る仕事があります。

何度も走るうちに、

「次はこの店舗」

「この時間ならこの道」

という流れを覚えられます。

タクシーは同じではありません。

どこから乗客が乗るか、どこへ行くかはその都度変わります。

乗客がいない時間には、駅や繁華街で待つ、街を走って乗客を探す、無線や配車アプリから依頼を受けるなどの方法があります。

つまり配送では、

「決められた仕事を効率よく終わらせる」

ことが中心になりやすいのに対し、タクシーでは、

「どこで営業すれば乗客を乗せられるか」

を考える場面があります。

自分で考えて動くことを面白いと感じる人には合いやすいでしょう。

決められたルートを淡々と回るほうが楽な人は、この違いをよく確認しておく必要があります。

給料の考え方も配送とは変わる可能性がある

タクシー会社では、基本給などに加えて売上高に応じて給与を支払う歩合制度を採用している会社が多くあります。

つまり、自分の営業売上が給与に影響します。

厚生労働省のjob tagに掲載されている令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした全国年収を見ると、タクシー運転手に対応する職業分類は450.8万円、ルート配送ドライバーに対応する職業分類は406.5万円となっています。

ただし、この2つの平均値だけを比べて、

「タクシーへ転職すれば年収が上がる」

とは判断できません。

対象となる職業分類が異なり、地域や会社、勤務形態などによる差もあるからです。

特にタクシーは歩合制度を採用する会社が多いため、転職時には平均年収より、自分が応募する会社の給与計算を確認したほうが重要です。

配送で安定した固定給をもらっている人は慎重に比較する

現在の配送会社で毎月ほぼ同じ給与を受け取っている人は、タクシーへ転職すると給与の変動を大きく感じる可能性があります。

未経験者向けに一定期間の給与保証を設けているタクシー会社もありますが、その後は通常の給与体系へ移ります。

そのため、

「今より稼げるかもしれない」

だけで転職すると危険です。

現在の配送会社の総支給額と、

タクシー会社の研修中
給与保証中
給与保証終了後

を分けて比較してください。

特に家賃、住宅ローン、家族の生活費など毎月必要な金額が決まっている人は、最高月収ではなく最低限必要な月収を確保できそうかを見る必要があります。

配送より勤務時間が短くなるとは限らない

「タクシーなら近距離しか走らないから配送より楽そう」と考えるのも注意が必要です。

タクシーには昼日勤や夜日勤だけでなく、隔日勤務を採用する会社があります。

隔日勤務は、一回の勤務が翌日まで続く働き方です。

現在の改善基準では、隔日勤務について2暦日の拘束時間は22時間以内、2回の隔日勤務を平均して1回21時間以内などの基準が設けられています。

拘束時間には休憩も含まれるため、22時間連続で運転するという意味ではありません。

それでも配送の日勤から転職する人にとっては、かなり違う生活リズムになります。

現在の配送で長時間勤務がつらいことが転職理由なら、

「タクシーへ行けば解決する」

と考えるのではなく、昼日勤を選択できる会社かを確認したほうがよいでしょう。

二種免許を持っていなくても転職できる会社はある

配送ドライバーで普通免許、中型免許、大型免許などを持っていても、タクシー営業には普通第二種運転免許が必要です。

ただし、自分で取得してから応募しなければならないとは限りません。

厚生労働省のjob tagでも、第一種免許保有者を採用し、第二種免許取得の養成を行う会社があると説明されています。

実際のタクシー会社でも、未経験者について二種免許取得費用を会社が負担し、取得後に座学や地理、接客、同乗指導などを行う採用があります。

配送経験者でも、タクシーとしては未経験です。

二種免許取得後にきちんと研修を受けられる会社を選んだほうがよいでしょう。

配送経験者だからこそ接客研修を軽視しない

配送経験が長い人なら、安全運転については自信があるかもしれません。

しかし、タクシー転職で大きく変わるのは接客です。

目的地の確認。

経路についての希望。

大きな荷物への対応。

料金の受け取り。

乗客からの質問。

ときにはトラブルへの対応も必要です。

配送先の担当者とのやり取りとは違い、毎回違う乗客が車内という近い距離に乗ります。

運転技術がある配送経験者ほど、

「運転はできるから大丈夫」

と考えず、接客研修や同乗研修がどの程度あるかを確認しておいたほうがよいでしょう。

配送からタクシーへ移って解決しやすいこと・残りやすいこと

配送を辞めたい理由から考えると、タクシーが合うか判断しやすくなります。

配送でつらいことタクシーへ移った場合
荷物の積み降ろし負担を減らせる可能性が高い
重い荷物通常の貨物配送はなくなる
決まった配送先を何件も回る働き方は大きく変わる
職場の人間関係一人で乗務する時間は長い
長時間運転タクシーでも残る
夜勤勤務形態によっては残る
道路渋滞タクシーでも残る
事故への不安タクシーでも残る
知らない人への対応配送より増える可能性がある
毎月の給与変動タクシーでは増える可能性がある

特に重要なのは、下半分です。

配送から逃れれば、運転そのものに伴う負担までなくなるわけではありません。

「積み降ろしが嫌」なのか、「運転そのものがつらい」のかで結論が大きく変わります。

配送からタクシーへの転職が候補になりやすい人

配送の運転自体は嫌いではない。

しかし、年齢とともに荷物の積み降ろしがつらくなってきた。

決められた納品先を次々と回るより、自分で考えながら動きたい。

職場では大勢と仕事をするより一人で乗務したい。

乗客への接客には抵抗がない。

このような人なら、タクシーへの転職は比較する価値があります。

配送で身につけた運転経験を残しながら、仕事内容を変えられるからです。

運転そのものから離れたいならタクシーでは解決しない

一方、

「もう長時間車に乗りたくない」

「運転中の事故リスクが怖い」

「渋滞に疲れた」

「夜間運転をしたくない」

と感じて配送を辞めたいのであれば、タクシーへ移っても根本的に解決しない可能性があります。

タクシーも乗客を乗せて公道を走る運転職です。

むしろ乗客を乗せる責任や接客が加わります。

配送を辞めたい理由が運転そのものにあるなら、運転職以外も比較したほうがよいでしょう。

転職を決める前に「辞めたい理由」を3つ書き出す

配送ドライバーからタクシーへ転職するか迷ったら、最初にタクシー会社へ応募する必要はありません。

まず、今の配送を辞めたい理由を3つ書き出してください。

たとえば、

「荷物の積み降ろしがきつい」
「朝が早すぎる」
「給料をもう少し上げたい」

とします。

次に、検討しているタクシー会社について、

「荷役作業はどう変わるか」
「勤務時間はどうなるか」
「未経験1年目の給与はいくらか」

を確認します。

これなら、「配送よりタクシーのほうが良さそう」という印象ではなく、自分の転職理由が実際に解消されるかで比較できます。

配送ドライバーからタクシー運転手への転職は十分に選択肢になります。

ただし、活かせるのは運転経験だけではありません。安全確認、道路状況の判断、一人で乗務する力なども役立ちます。

その代わり、接客、営業、歩合給、タクシー独自の勤務形態という新しい要素が加わります。

今の配送で何がつらいのかを明確にし、その問題がタクシーへ移ることで本当に減るのかを確認してから転職先を選ぶことが重要です。

出典

厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag) タクシー運転手
厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag) ルート配送ドライバー
厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag) トラックドライバー
厚生労働省|ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示
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