タクシーの隔日勤務は、一回の勤務時間が長いため、合わない人にはきつい働き方です。
一方、勤務が終わったあとの「明け」と公休日を使えるため、毎日出勤する働き方より合っていると感じる人もいます。
重要なのは、「18時間前後働けるか」だけで判断しないことです。
隔日勤務は、
勤務する日
↓
勤務終了後の明け
↓
次の勤務または公休日
という流れで生活します。
そのため、自分に向いているかを判断するには、一勤務の長さだけでなく、勤務後に睡眠を取って次の勤務までに回復できるかを見る必要があります。
隔日勤務は朝から翌日まで働く勤務形態
隔日勤務とは、勤務開始日と終了日が別の日になるタクシー特有の勤務形態です。
会社によって出庫・帰庫時間は違いますが、朝や昼に出勤して、翌日の早朝などに勤務を終える形があります。
厚生労働省の職業情報では、大都市の例として1回19時間の隔日勤務、そのうち3時間を休憩とし、翌日は休み、月12~13回乗務するケースが紹介されています。
実際の会社でも、日本交通は1乗務15.5~18時間に休憩3時間、月11~13回乗務としています。
大和自動車交通では、1勤務17時間の中で3時間以上休憩し、月12回乗務する勤務例があります。
つまり隔日勤務は、
「2日間ずっと働き続ける」
という意味ではありません。
一回の拘束時間が長く、その中に休憩を入れながら働き、勤務終了後にまとまった休息を取る働き方です。
現在は隔日勤務の拘束時間と休息時間にも基準がある
タクシー会社が自由に何時間でも隔日勤務を組めるわけではありません。
2024年4月から適用されている現在の改善基準では、隔日勤務について、
1カ月の拘束時間は原則262時間以内
2暦日の拘束時間は22時間以内
2回の隔日勤務を平均して1回21時間以内
とされています。
勤務終了後については、継続24時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、22時間を下回らないこととされています。
ここでいう拘束時間には、労働時間だけでなく休憩時間も含まれます。
したがって、
「最大22時間拘束される=22時間運転し続ける」
という意味ではありません。
ただし、一般的な8時間勤務と比べて一回の勤務が長いことは変わりません。
きついかどうかは「一勤務」だけでは判断しにくい
隔日勤務について、
「一回17時間も働くなら絶対に無理」
と感じる人もいるでしょう。
逆に、
「月12回くらいしか出勤しないなら楽そう」
と思う人もいます。
どちらも一部分しか見ていません。
隔日勤務は、一勤務だけを切り取るより、
出勤
↓
長時間の乗務
↓
帰宅
↓
睡眠・休養
↓
自由時間
↓
次の勤務
という一連の流れで考える必要があります。
この流れを自分の生活へ当てはめたときに回復できるかどうかが、隔日勤務との相性を判断するポイントです。
一番きつくなりやすいのは勤務時間の長さ
隔日勤務で最も分かりやすい負担は、一回の勤務時間が長いことです。
一般的な会社員なら、朝出勤して夕方や夜に仕事を終えます。
隔日勤務では、そこからさらに夜間や深夜まで乗務します。
しかもタクシーは、ただ車内に座っていればよい仕事ではありません。
道路状況を確認する。
安全運転を続ける。
乗客へ対応する。
経路を判断する。
売上を考えながら営業場所を選ぶ。
これらを長時間続けます。
長時間座っていることより、長い時間集中を維持することを負担に感じる人もいるでしょう。
深夜まで起きていられるかも大きい
隔日勤務では夜間や深夜の乗務が入ります。
普段から夜になると強い眠気が出る人の場合、最初は生活リズムの違いを大きく感じる可能性があります。
特にこれまで、
朝起きる
昼間働く
夜11時ごろ寝る
という生活を何十年も続けてきた人にとっては、大きな変化です。
反対に、以前から夜勤や交代勤務を経験していて、深夜の仕事に抵抗が少ない人なら適応しやすい可能性があります。
配送、トラック、工場勤務、警備などで夜勤経験がある人は、自分が夜間勤務でどの程度疲れるのかを思い出してみると判断材料になります。
勤務中に休憩・仮眠を取れることが重要
長い隔日勤務では、休憩の取り方が非常に重要です。
日本交通では、1乗務の中で3時間ほどの休憩・仮眠時間を設けています。
大和自動車交通も、1勤務17時間の中で合計3時間以上の休憩を取る勤務例を案内しています。
厚生労働省の職業情報でも、タクシー運転手は休憩時間をいつ取るかについて、ある程度本人の裁量になる場合があるとされています。
つまり、
「疲れたら休む」
ではなく、
「疲れる前にどこで休むか」
を自分で管理する必要があります。
売上を伸ばしたいからと休憩を後回しにしやすい人は、隔日勤務をきつく感じやすくなる可能性があります。
明けは「丸一日の休日」と同じ感覚で考えないほうがいい
隔日勤務では、勤務を終えた日を「明け」「明け休み」「明番」などと呼びます。
たとえば深夜や早朝に勤務を終えれば、その後は会社へ出勤しません。
ここだけ見ると、
「勤務12回なら月の半分以上休みでは?」
と感じるかもしれません。
ただし、長時間勤務を終えた直後です。
帰宅してから睡眠を取り、疲労を回復する時間が必要になります。
そのため明けの日を、
朝から夜まで完全に自由に使える普通の休日
として計算すると、実際の生活とのズレが出やすくなります。
まず睡眠と回復。
そのあとに使える時間が明けの日の自由時間と考えたほうが現実的です。
明けをどう過ごすかで生活リズムが変わる
たとえば朝に帰宅した場合を考えてみます。
帰宅後すぐに寝る。
昼過ぎに起きる。
午後から買い物や用事を済ませる。
夜は通常に近い時間にもう一度寝る。
このような生活を作れる人もいます。
一方、帰宅後に夕方まで寝てしまい、夜になって眠れなくなり、次の日の睡眠時間もずれていく人もいるでしょう。
隔日勤務では、仕事そのものだけでなく、
「明けの日にどう寝るか」
まで含めて働き方になります。
自分で睡眠時間を管理するのが苦手な人は、この部分を慎重に考えたほうがよいでしょう。
明けと公休日は分けて考える
タクシー会社の勤務表を見ると、
出番
明番
公休
などと書かれていることがあります。
出番は実際に乗務する日。
明番は勤務を終えたあとの日。
公休はそれとは別の休日です。
たとえば、
月曜日:出番
火曜日:明番
水曜日:出番
木曜日:明番
金曜日:公休
というような組み方があります。
隔日勤務の「休みが多い」という特徴を理解するときは、明番と公休を同じものとして数えないほうが分かりやすくなります。
明番は長時間勤務後の回復日でもあるからです。
平日の昼間に時間を使いやすいのはメリット
隔日勤務には、一回の勤務が長い代わりに、一般的な平日勤務とは違う時間の使い方ができるメリットがあります。
明けの日や公休日が平日になれば、
病院
役所
銀行
買い物
などへ行きやすくなります。
趣味や家族との時間へ使うこともできます。
会社によっては、公休や有給休暇との組み合わせで連休を作れる勤務例もあります。
「土日だけ休み」より、平日の自由時間を使いたい人にとってはメリットになりやすいでしょう。
毎日会社へ行きたくない人には合いやすい
隔日勤務は、一回の勤務は長いものの、出勤回数は一般的な週5日勤務より少なくなります。
そのため、
通勤そのものが負担
毎朝会社へ行く生活が嫌
仕事と休みをはっきり分けたい
という人には合う可能性があります。
一回しっかり働き、その後にまとまった休息を取る。
このリズムを好む人にとっては、毎日8時間ずつ働くより生活しやすい場合があります。
一回の仕事を短く終えたい人には向きにくい
反対に、
「仕事の日でも夕方には家へ帰りたい」
という人には隔日勤務は合いにくいでしょう。
家族と毎晩夕食を取りたい。
毎日決まった時間に寝たい。
夜に定期的な予定がある。
このような生活を優先する人の場合、一回の勤務が翌日まで続く隔日勤務は予定を組みにくくなります。
タクシー会社によっては昼日勤を募集しているため、タクシーそのものを諦めるのではなく、日勤を選べる会社を探す方法があります。
子どもや家族との生活時間も実際に当てはめてみる
家族がいる場合は、自分だけの睡眠時間で決めないほうがよいでしょう。
たとえば明けの朝に帰宅したとしても、
子どもが学校へ行く時間
家族が仕事へ出る時間
昼間の生活音
などによって十分に眠れない可能性があります。
逆に、平日の昼間に時間ができることで、家事や家族の用事を担当しやすくなることもあります。
隔日勤務が家庭生活へ良いか悪いかは、一律には決まりません。
「いつ家にいるか」より、
「いつ眠らなければならないか」
まで家族の生活と重ねることが重要です。
50代以降なら今だけでなく数年後も考える
40代・50代からタクシーへ転職する人なら、
「今なら17時間勤務できそう」
だけで判断しないほうがよいでしょう。
数年後も同じ働き方を続けられそうか考えます。
特に50代後半から転職する場合は、
隔日勤務から昼日勤へ変更できるか
乗務回数を調整できるか
定年後はどんな勤務になるか
も確認しておくと安心です。
会社によって勤務制度は異なります。
長く働くことを考えるなら、勤務形態を途中で変更できる会社かどうかも比較材料になります。
隔日勤務に向いているのは「長時間働ける人」だけではない
隔日勤務に向きやすいのは、単に体力がある人ではありません。
一回の勤務が長い代わりに、出勤回数が少ない働き方を好む。
夜間運転に強い抵抗がない。
勤務中に自分で休憩を取れる。
明けの日に睡眠を調整できる。
平日の自由時間を使いたい。
このような人は、隔日勤務のメリットを活かしやすいでしょう。
特に重要なのは自己管理です。
売上を優先して休憩を削るのではなく、長時間勤務を前提に休憩と睡眠を確保できる人のほうが続けやすくなります。
隔日勤務が合いにくい人
反対に、
毎日同じ時間に起きて同じ時間に寝たい
深夜運転が苦手
長時間集中すると極端に疲れる
帰宅後すぐ眠ることが難しい
家族との生活上、昼間に睡眠を確保できない
という人は慎重に考えたほうがよいでしょう。
ただし、これは「タクシー運転手に向いていない」という意味ではありません。
隔日勤務が合わないだけかもしれません。
昼日勤や夜日勤を選択できる会社なら、同じタクシー運転手でも生活リズムは大きく変わります。
求人の「月12回勤務」だけで決めない
隔日勤務の求人では、
「月11~13乗務」
「月12乗務」
といった数字が目立ちます。
一般的な月20日前後の出勤と比べると、かなり少なく感じます。
しかし、ここだけを見て「休みが多い会社」と判断するのは早いでしょう。
確認したいのは、
出庫時刻
帰庫時刻
1乗務の拘束時間
休憩時間
明けのあと次に何時から勤務するか
公休がどこに入るか
です。
同じ月12乗務でも、出庫・帰庫時間によって生活のしやすさは変わります。
最も分かりやすいのは1カ月の勤務表を見せてもらうこと
隔日勤務が自分に合うか確かめるなら、求人票の勤務時間だけを見続けても答えは出にくいでしょう。
会社説明会や面接で、
「隔日勤務の実際の1カ月分の勤務例を見せてもらえますか」
と聞いてください。
その勤務表を見ながら、自分で、
出勤時刻
退勤時刻
帰宅時刻
睡眠時間
家族との時間
趣味や用事
を書き込みます。
たとえば勤務終了が午前2時で、自宅到着が午前3時なら、
午前3時に帰宅
↓
午前4時就寝
↓
何時まで寝るか
まで考えます。
ここまで具体化すると、
「隔日勤務はきつそう」
という漠然とした不安から、
「この時間なら生活できそう」
「この勤務では睡眠が取れない」
という判断に変わります。
タクシーの隔日勤務は、一回の勤務時間が長いため、誰にでも楽な働き方ではありません。
一方、明けと公休を活用でき、毎日出勤する必要がないため、このリズムのほうが働きやすい人もいます。
向いているかを判断するなら、
「17時間働けるか」
だけではなく、
「勤務終了後に十分眠り、次の勤務までに回復できる生活を作れるか」
を考えてください。
候補の会社を2~3社選び、実際の1カ月勤務表を見せてもらって、自分の睡眠時間を書き込んでみる。
これが、隔日勤務が自分に合うかを確認する一番具体的な方法です。
出典
厚生労働省|ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示
厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag) タクシー運転手
日本交通株式会社|一日の流れ
日本交通株式会社|募集要項
大和自動車交通株式会社|タクシー乗務員 経験者採用
国際自動車株式会社|タクシーの隔日勤務はどんな生活リズム?1日の流れやきつい理由、慣れるコツを解説
