タクシーの隔日勤務は、必ず睡眠不足になる働き方ではありません。
勤務終了後には長い休息時間が設けられ、勤務中にも休憩・仮眠を取る会社があります。
ただし、一回の勤務が長く深夜帯まで運転するため、帰宅後の睡眠をうまく確保できない人は睡眠不足になりやすい働き方でもあります。
特に注意したいのは、「明け休みがあるから睡眠は大丈夫」と考えることです。
明けの日を予定で埋めてしまう、昼間に眠れない、勤務中に休憩を後回しにするといった生活が続けば、制度上は休息時間が確保されていても、実際の睡眠時間は不足します。
隔日勤務が自分に合うかは、勤務時間だけでなく「勤務終了後にいつ眠り、次の乗務までに回復できるか」で判断する必要があります。
隔日勤務は翌日まで働く勤務形態
隔日勤務は、始業と終業が同じ日ではなく、勤務が翌日にまたがる働き方です。
厚生労働省では、タクシーの隔日勤務について、2日分の業務を1回の勤務で行い、その後に明け休みと公休を取る勤務形態として紹介しています。
実際の勤務時間は会社によって違います。
たとえば日本交通では、1回15.5~18時間勤務し、その中に約3時間の休憩・仮眠時間を設けています。
大和自動車交通でも、隔日勤務は1回17時間前後で、その中に3時間以上の休憩を取る勤務例があります。
一般的な8時間勤務とはかなり違うため、これまで日勤だけで働いてきた人は、最初に生活リズムの違いを意識しておいたほうがよいでしょう。
隔日勤務のあとには22時間以上の休息が必要
現在の改善基準では、タクシーの隔日勤務について、2暦日の拘束時間は22時間以内とされています。
さらに2回の隔日勤務を平均して、1回21時間以内にしなければなりません。
勤務終了後については、継続24時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、少なくとも22時間を下回らないこととされています。
つまり、
朝まで働いた
↓
数時間後にまた出勤
という働き方は基本的にできません。
勤務終了後には次の勤務までまとまった時間が確保されます。
ただし「休息22時間=22時間眠れる」ではない
ここが睡眠を考えるうえで重要です。
改善基準でいう「休息期間」は、勤務終了から次の勤務開始まで、会社に拘束されない時間を指します。
睡眠時間そのものではありません。
たとえば勤務を終えてから、
会社で洗車や着替えを終える
自宅まで移動する
食事をする
入浴する
家族と過ごす
買い物や用事を済ませる
といった時間もあります。
22時間の休息期間があっても、その大部分を起きて過ごせば睡眠不足になります。
「会社の勤務表が基準を守っているか」と「自分が十分眠れているか」は別々に考える必要があります。
明け休みはまず回復のための時間と考える
隔日勤務では、勤務終了後の時間を「明け」「明け休み」「明番」などと呼びます。
たとえば午前2時に勤務が終われば、その日は再び乗務しません。
そのため、
「朝から休みだから一日自由に使える」
ように見えます。
しかし実際には、前日から長時間勤務しています。
帰宅後に睡眠を取らず、そのまま買い物、趣味、家族との外出などを続ければ、起きている時間がかなり長くなります。
明けの日は普通の休日というより、
勤務終了
↓
睡眠・回復
↓
残った時間を自由に使う
と考えたほうが現実的です。
明けの日に寝すぎると夜眠れないこともある
反対に、明けの日を夕方まで寝続ければ必ず良いとも限りません。
夕方まで長く眠った結果、その日の夜に眠れなくなり、次の日の生活時間がずれてしまうことがあります。
隔日勤務では、
勤務中の休憩・仮眠
勤務終了後の睡眠
次の勤務前の睡眠
をどう組み合わせるかが重要です。
「明けの日に何時間寝れば全員正解」という時間はありません。
必要な睡眠時間には個人差があります。
国土交通省も、睡眠時間が一定時間を下回ったら一律に乗務禁止とする基準は設けていません。
本人の申告や顔色、仕草、話し方などを含め、睡眠不足によって安全運転できない状態ではないかを総合的に確認する考え方です。
乗務中にも休憩・仮眠を取る会社がある
隔日勤務は勤務時間が長いため、勤務中の休憩も重要です。
日本交通では1乗務につき3時間の休憩を義務付け、夜の営業へ入る前に休憩・仮眠を取る勤務例を紹介しています。
大和自動車交通も、1勤務の中で合計3時間以上の休憩を取る勤務制度です。
休憩のタイミングをある程度乗務員自身が決める会社もあります。
これは自由である一方、
「売上を増やしたいから、もう少し走ろう」
と休憩を後回しにしやすい面もあります。
隔日勤務を長く続けるなら、乗客が少なくなってから休むのではなく、深夜帯を含む長時間勤務を前提に休憩を組み込めることが重要です。
仮眠だけで普段の睡眠を置き換えることはできない
勤務中に仮眠が取れるから、
「家ではあまり寝なくても大丈夫」
と考えるのは避けたほうがよいでしょう。
国土交通省は事業用自動車の運転者への安全指導で、十分な睡眠を取ることが事故防止に重要としており、従来の指導資料では6~7時間程度の連続した睡眠を取ることを推奨しています。
もちろん必要な睡眠時間には個人差があります。
重要なのは、
夜中に短時間眠ったから大丈夫
ではなく、
普段の生活の中で自分に必要な睡眠を確保できているか
です。
出庫前には睡眠不足も確認対象になる
タクシー会社では出庫前に点呼があります。
運転者の健康状態、疲労、飲酒など、安全に乗務できる状態かを確認します。
睡眠不足についても、安全な運転ができないおそれがある場合は確認対象です。
運転者自身も、
「ほとんど眠れていない」
「強い眠気が残っている」
など、安全に運転できない状態であれば申告する必要があります。
タクシーは乗客を乗せる仕事なので、「眠いけれど今日だけ我慢して走る」という考え方では続けにくい仕事です。
乗務中に眠くなった場合も無理をしない
出庫するときは問題なくても、長時間勤務の途中で眠気が出ることがあります。
特に深夜帯は、普段なら眠っている時間です。
国土交通省も、乗務開始後に眠気を感じた場合を含め、睡眠不足によって安全運転できないおそれがある場合は申告する考え方を示しています。
そのため、
売上目標まであと少し
終電後で乗客が多い
もう一組乗せたい
という状況でも、強い眠気を感じているなら安全を優先しなければなりません。
歩合給だからこそ、休憩を削って売上を増やす働き方にならないよう注意する必要があります。
「睡眠時間は確保しているのに眠い」場合もある
十分寝たつもりなのに、日中や運転中に強い眠気が出る場合もあります。
その一つとして国土交通省が事業用ドライバー向けに対策を進めているのが、睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠中に呼吸が止まったり弱くなったりして睡眠の質が低下し、日中の強い眠気や集中力低下につながることがあります。
さらに、本人が強い眠気を自覚していないケースもあるとされています。
大きないびきを指摘されている。
睡眠中に呼吸が止まっていると言われたことがある。
十分寝ても強い眠気が続く。
こうした場合は、「隔日勤務だから眠い」と決めつけないほうがよいでしょう。
必要に応じて医療機関へ相談することも、安全に運転を続けるための確認になります。
家族と暮らしている人は昼間に眠れる環境も確認する
隔日勤務で見落としやすいのが、自宅の環境です。
明けに帰宅して眠ろうとしても、
子どもが家にいる
家族の生活音がある
宅配や電話が多い
部屋が明るい
夏場に寝室が暑い
などで、思ったように眠れない可能性があります。
特にこれまで夜勤経験がなく、夜にしか眠ったことがない人は、
「疲れて帰れば昼でも眠れるだろう」
と考えず、昼間の睡眠環境まで想像しておいたほうがよいでしょう。
隔日勤務との相性は会社の勤務時間だけでは決まりません。
通勤時間が長いと実際に眠れる時間はさらに短くなる
会社の勤務表だけを見ると、十分な休息があるように見えても、通勤時間は自分の生活時間から使います。
たとえば午前2時に勤務終了でも、
洗車・納金
着替え
会社から自宅まで1時間
と進めば、実際に家へ着くのはさらに後になります。
翌日の勤務開始までの時間が同じでも、会社まで片道20分の人と1時間半の人では、睡眠に使える時間が違います。
隔日勤務の会社を選ぶときは、
勤務終了時刻
↓
実際の退社時刻
↓
帰宅時刻
↓
就寝できる時刻
まで計算してみる必要があります。
睡眠不足になりやすい人は隔日勤務以外も考える
タクシーには隔日勤務しかないわけではありません。
会社によっては昼日勤・夜日勤があります。
特に、
夜になると強い眠気が出る
明けの日に昼間眠れない
生活時間を毎日そろえたい
長時間勤務後の回復に時間がかかる
という人なら、昼日勤のほうが生活を組みやすい可能性があります。
「隔日勤務が無理=タクシー運転手が無理」ではありません。
自分が続けられる勤務形態を選べる会社か確認することが重要です。
隔日勤務が合いやすいのは睡眠を自分で管理できる人
隔日勤務との相性を見るなら、単に「夜更かしが得意か」で考える必要はありません。
重要なのは、
勤務中に決めた休憩を取れる
明けの日に予定を詰め込みすぎない
帰宅後に眠れる環境を確保できる
次の乗務前に必要な睡眠を取れる
眠気が強いときに無理をしない
という自己管理です。
一回長く働いて、その後まとまって休む生活が合う人なら、毎日出勤する働き方より過ごしやすい可能性もあります。
応募前に勤務終了から次の出勤までを書き出す
隔日勤務で睡眠不足にならないか心配なら、求人の「休みが多い」という説明だけで判断しないでください。
応募予定の会社に、実際の隔日勤務の1カ月勤務表と1乗務の勤務例を見せてもらいます。
そして、勤務終了後について自分で時刻を書き込みます。
たとえば、
午前2時 勤務終了
午前3時 会社を出る
午前4時 帰宅
午前5時 就寝
午前11時 起床
というように、自分の通勤時間や生活を加えます。
さらに次の勤務前にも、何時から何時まで眠れるかを書きます。
ここまで作って、
十分眠れる
明けにも予定を入れられる
なら隔日勤務を検討しやすくなります。
反対に、
明けの日にほとんど眠れない
家族の生活時間と重なって休めない
次の勤務まで疲れが残りそう
なら、昼日勤を含めて比較したほうがよいでしょう。
タクシーの隔日勤務は、制度上は勤務終了後に長い休息期間が設けられています。
しかし、休息時間と実際の睡眠時間は同じではありません。
隔日勤務で睡眠不足になるかどうかを判断するときは、勤務時間ではなく、
「勤務終了から帰宅し、いつ眠り、次の勤務前までに何時間眠れるのか」
まで自分の生活へ当てはめてください。
それが、タクシー転職後に生活リズムを維持できるかを確認する最も具体的な方法です。
隔日勤務が合うか、負担を確認します。
→ タクシーの隔日勤務はきつい?向いている人と生活リズム
夜勤を避けたいなら、日勤求人を確認します。
→ 日勤だけのタクシー求人はある?夜勤なしで働く方法
体力が心配なら、長く続けられるか確認します。
→ タクシー運転手は体力的に何歳まで続けられる?
出典
厚生労働省|ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示
厚生労働省|ハイヤー・タクシー運転者 労働時間等の改善のための基準学習テキスト
厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag) タクシー運転手
国土交通省|睡眠不足に起因する事故の防止対策を強化します!!
国土交通省|自動車運送事業者における睡眠時無呼吸症候群対策マニュアル
日本交通株式会社|一日の流れ
大和自動車交通株式会社|タクシー乗務員 経験者採用
