タクシー運転手を体力的に何歳まで続けられるかに、一律の答えはありません。
法人タクシーについて国が「○歳になったら乗務できない」という一律の上限年齢を設けているわけではなく、実際に70代まで乗務できる制度を設けている会社もあります。
一方、長時間の運転、夜間勤務、睡眠リズム、集中力の維持などが必要なため、「75歳まで雇用制度がある=75歳まで誰でも同じ勤務を続けられる」という意味でもありません。
年齢より重要なのは、今の勤務を終えたあと十分に回復できるか、安全運転に必要な集中力や身体機能を維持できているかです。
タクシー運転手は60代でも珍しくない
タクシー業界は、他業種と比べて年齢層が高い仕事です。
国土交通省の資料では、2024年のタクシー運転手の平均年齢は60.5歳となっています。
一方、厚生労働省の職業情報提供サイトに掲載されている2025年の対応職業分類では、平均年齢は56.8歳です。
集計対象などが異なるため数字には差がありますが、少なくとも50代後半から60歳前後の運転手が多く働いている業界だということは分かります。
そのため、60歳になったから体力的にタクシーを続けられなくなるとは考えなくてよいでしょう。
タクシーは荷役が少ないが、別の体力が必要
タクシーはトラック配送や建設作業のように、重い荷物を何度も持ち上げる仕事ではありません。
乗客のスーツケースなどを扱うことはありますが、仕事の大部分は車内での運転です。
その意味では、年齢を重ねても続けやすい面があります。
一方で必要になるのが、
・長時間座って運転する
・周囲へ注意を向け続ける
・乗客に対応する
・夜間も運転する
・不規則な時間帯に睡眠を取る
といった力です。
特に隔日勤務では、1回の乗務が長時間になります。
「重い物を持てるか」より、「勤務の最後まで安全運転に必要な集中力を維持できるか」のほうが重要です。
何歳まで続けられるかは勤務形態で変わる
同じ人でも、勤務形態を変えることで続けられる期間が変わる可能性があります。
例えば60代までは隔日勤務をしていても、
「翌日の明け休みだけでは疲れが抜けにくくなった」
と感じるようになるかもしれません。
その場合、
隔日勤務
↓
昼日勤
へ変更すれば、1回の勤務時間を短くできます。
さらに会社によっては、勤務日数を減らしたり短時間勤務へ変更したりできる場合があります。
つまり、
「隔日勤務がきつくなった=タクシーを辞める」
とは限りません。
年齢に合わせて働き方を変えられる会社なら、その後も乗務を続けられる可能性があります。
60代は「年齢」より回復できているかを見る
60代でタクシーを続けるなら、年齢そのものより勤務後の状態を見たほうが現実的です。
例えば隔日勤務なら、
勤務終了
↓
帰宅して睡眠
↓
明け休み
↓
次の勤務
という流れになります。
このとき、次の勤務までに疲労が取れているなら、現在の勤務を続けられる可能性があります。
反対に、
「明け休みをほとんど寝て過ごしても疲れが残る」
「勤務後半になると強い眠気を感じる」
「夜になると運転への集中が続きにくい」
という状態が続くなら、勤務形態を見直すきっかけになります。
何歳かではなく、「次の乗務までに回復できているか」で考えるほうが分かりやすいでしょう。
65歳以上は適齢診断の対象になる
事業用自動車の高齢運転者については、年齢に応じた適性確認も行われています。
法人タクシーなどの旅客自動車運送事業では、65歳以上の運転者に「適齢診断」を受けさせることが事業者に義務付けられています。
65歳になった日以後1年以内に1回受診し、その後75歳までは3年以内ごとに1回受診します。
75歳になった後は、1年以内ごとに1回です。
適齢診断では、加齢による身体機能の変化が運転にどのような影響を与えるのかを確認し、安全運転について助言・指導を受けます。
つまり制度上も、
「65歳になったら運転をやめる」
のではなく、
「年齢に応じて運転特性を確認しながら続ける」
仕組みになっています。
70歳を超えると免許更新の確認も増える
70歳以上になると、タクシー会社の制度だけでなく運転免許の更新手続も変わります。
免許更新時に70歳以上であれば、高齢者講習が必要です。
75歳以上になると認知機能検査も必要になります。
さらに75歳以上で、過去3年間に一定の交通違反歴がある場合は、運転技能検査に合格しなければ免許を更新できません。
つまり70代になると、
会社が継続雇用してくれるか
+
健康・運転適性に問題がないか
+
運転免許を更新できるか
をすべて満たして乗務を続けることになります。
実際に75歳まで働ける会社もある
定年や継続雇用の上限は、タクシー会社によって違います。
例えば大和自動車交通ではタクシー乗務員の定年を60歳としていますが、健康状態などに問題がなければ最長75歳まで働けるとしています。
日の丸交通では70歳の選択定年制を採用し、定年後も75歳まで雇用を継続できる制度があります。
実際に同社では、定年後も働く乗務員が在籍しています。
このように70代まで働ける会社はあります。
一方で、すべての会社が75歳まで乗務できるわけではありません。
例えば72歳までとする会社もあれば、定年後の継続雇用条件を健康状態や勤務実績によって判断する会社もあります。
「タクシー業界なら75歳まで働ける」のではなく、「75歳まで働ける会社がある」と考えてください。
70代は勤務時間を減らす選択も考える
70代まで働くなら、50代・60代と同じ勤務量を維持することだけが選択肢ではありません。
例えば、
隔日勤務から昼日勤へ変更する
月の乗務回数を減らす
短時間勤務に変更する
といった方法があります。
日の丸交通のように、介護や育児などを対象に短時間勤務制度を設けている会社もあり、会社によっては年齢や状態に応じた働き方を相談できます。
長く続けたいなら、
「75歳まで働けるか」
だけではなく、
「70歳になったとき勤務量を減らせるか」
まで確認したほうがよいでしょう。
長く続けるなら健康管理をしている会社を選ぶ
タクシーは乗客を乗せる事業用自動車です。
そのため、会社には乗務員の健康状態を把握し、安全に運転できないおそれがある場合には乗務させないための管理が求められています。
国土交通省は、事業用自動車の運転者について、
・睡眠時無呼吸症候群
・脳血管疾患
・心臓疾患・大血管疾患
・視野障害
などへの健康管理対策を示しています。
これは高齢者だけの問題ではありませんが、年齢を重ねながら長く乗務するなら重要になります。
会社を見るときも、
「健康診断があります」
だけではなく、
「睡眠時無呼吸症候群などの検査を行っていますか」
「高齢乗務員の健康管理はどのようにしていますか」
まで確認すると会社の安全管理を比較できます。
「何歳まで」より現在の5項目で判断する
体力的に続けられるかを考えるなら、年齢より次の状態を確認したほうが実用的です。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 疲労回復 | 次の勤務までに疲れが取れるか |
| 睡眠 | 勤務に合わせて十分眠れるか |
| 集中力 | 勤務後半でも注意力を保てるか |
| 視力・運転適性 | 安全確認に不安がないか |
| 勤務時間 | 今の勤務形態を無理なく続けられるか |
例えば68歳でも、この5項目に問題がなく昼日勤で無理なく働ける人はいるでしょう。
反対に60歳でも、隔日勤務で毎回強い疲労が残るなら、現在の勤務を続けるのが合っていない可能性があります。
年齢だけでは判断できない理由はここにあります。
50代・60代から転職するなら定年後まで確認する
これからタクシーへ転職する場合は、「採用される年齢」だけを見るのでは足りません。
例えば60歳で入社しても、
65歳で定年
↓
その後は再雇用
↓
70歳から勤務日数を減らす
↓
75歳まで勤務
という働き方ができる会社なら、長く続けられる可能性があります。
一方、昼日勤や短時間勤務へ変更できない会社なら、隔日勤務が身体的にきつくなった時点で選択肢が少なくなります。
転職時には、
「定年は何歳か」
だけではなく、
「定年後は何歳まで働けるか」
「年齢に応じて隔日勤務から昼日勤へ変更できるか」
「勤務日数を減らせるか」
の3点まで聞いてください。
体力的な限界は年齢より「勤務を調整しても安全に働けるか」
タクシー運転手は、60代でも珍しくなく、会社によっては70代まで乗務できます。
法人タクシーについて国が一律の上限年齢を設定しているわけではなく、実際の上限は会社の定年・再雇用制度と本人の健康状態、運転適性によって決まります。
ただし年齢が上がれば、適齢診断や高齢者講習、75歳以降の認知機能検査など、安全に運転できる状態かを確認する機会も増えます。
「何歳まで隔日勤務を続けられるか」だけで考えないことが重要です。
隔日勤務がきつくなったら昼日勤へ変える、乗務回数を減らすなど、身体に合わせて勤務を変えられれば乗務を続けられる可能性があります。
長く働きたいなら、求人候補の会社に、
「70歳以降も働けますか」
だけではなく、
「70歳前後になって隔日勤務がきつくなった場合、昼日勤や勤務日数の少ない働き方へ変更できますか」
と聞いてください。
その答えまで比較すれば、「何歳まで雇ってくれる会社か」ではなく、「年齢を重ねても無理なく続けられる会社か」で転職先を選べます。
出典
国土交通省|令和7年版 国土交通白書
厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag)「タクシー運転手」
国土交通省|事業用自動車の安全対策「適性診断の受診」
国土交通省|事業用自動車の安全対策「健康管理」
警察庁|日本在住で日本の運転免許証をお持ちの方
警察庁|認知機能検査について
警察庁|運転技能検査について
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