タクシー運転手はきつい?転職前に知っておきたい大変なこと

タクシー運転手は、楽な仕事とはいえません。

ただし、「ずっと車を運転しているからきつい」というだけでもありません。

未経験で転職した人が負担を感じやすいのは、一回の勤務が長いこと、運転しながら安全・経路・乗客対応を同時に考えること、休憩や体調を自分で管理すること、そして最初は地理や営業方法にも慣れなければならないことです。

反対に、これらの一部は勤務形態や研修、配車方法など会社選びによって軽くできます。

転職前には「タクシーはきついか」ではなく、「自分がどのきつさなら許容できるか」まで考えることが重要です。

一番イメージしておきたいのは一回の勤務の長さ

タクシーには昼日勤や夜日勤のほか、「隔日勤務」という働き方があります。

隔日勤務とは、始業と終業が同じ日ではなく、翌日にまたがって働く勤務です。

厚生労働省の現行基準では、隔日勤務の2暦日の拘束時間は22時間以内とされ、2回の隔日勤務を平均して1回21時間以内とする基準が設けられています。

これは「21時間ずっと運転する」という意味ではありません。拘束時間には休憩なども含まれます。

実際の勤務時間は会社によって異なりますが、一般的な8時間勤務とは一日の使い方がかなり違うと考えておいたほうがよいでしょう。

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」でも、大都市では1回19時間の隔日勤務を採用するケースが紹介されています。

タクシー転職で最初に確認するべきなのは、「月に何回出勤するか」だけではありません。

何時に出勤して、何時ごろ帰宅し、その後どの程度休めるのか。

実際の一勤務を時刻で確認することが重要です。

「明けの日があるから楽」とも限らない

隔日勤務では、勤務終了後に長い休息時間があります。

現行の改善基準では、隔日勤務者について勤務終了後に継続24時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、22時間を下回らないこととされています。

そのため、一般的な週5日勤務より出勤回数が少なく見える場合があります。

ここで注意したいのが、勤務明けと普通の休日を同じ感覚で考えないことです。

長い勤務を終えて帰宅した後は、睡眠や疲労回復に時間を使うことになります。

「月12回程度しか出勤しないなら休みが多そう」という数字だけを見るのではなく、勤務開始から次の勤務開始までを一つのサイクルとして考えたほうが、自分の生活を想像しやすくなります。

家族との時間、趣味、通院など決まった予定がある人は、実際の1カ月分の勤務表を確認してから判断したほうがよいでしょう。

運転以外のことを同時に考えるのが大変

タクシー運転手は、単純に目的地まで車を走らせればよい仕事ではありません。

乗客から目的地を聞き、交通状況を見ながら経路を選び、安全に運転しなければなりません。

さらに乗客によっては経路を指定されたり、道路状況について質問されたりすることがあります。

厚生労働省のjob tagでも、交通状況を考慮したルート選択、乗客への対応、料金の徴収、忘れ物確認、事故やトラブルへの対応などがタクシー運転手の仕事として挙げられています。

特に未経験のうちは、

「この道で合っているか」

「乗客は急いでいないか」

「次はどこで営業するか」

「休憩はいつ取るか」

と考えることが多くなります。

運転そのものより、このように複数のことへ注意を向けながら一日を組み立てることを「きつい」と感じる人もいます。

休憩を自分で管理する難しさがある

会社員として決まった時間に全員で休憩する職場とは違い、タクシーでは乗務中に自分で休憩のタイミングを判断する場面があります。

job tagでも、乗客の要望によって長時間の連続運転になる場合があり、休憩をいつ取るかはある程度個人の裁量になると説明されています。

これは自由でもありますが、自己管理も必要です。

乗客が続いていると、

「もう一組乗せてから休もう」

と考えたくなることがあります。

売上を伸ばしたい日なら、なおさら休憩を後回しにしたくなるかもしれません。

しかし、タクシーは安全に乗客を運ぶ仕事です。

疲れてから休むのではなく、長い勤務を前提としてどこで休むかを考えられることも仕事の一部になります。

自分のペースで働けることと、自分で体調管理をしなければならないことは表裏一体です。

最初は道を知らないことも精神的な負担になる

カーナビがあるため、街の道路をすべて暗記してから入社する必要はありません。

一方で、「ナビがあるから地理はまったく覚えなくてもいい」という仕事でもありません。

job tagでも、カーナビを利用することが多くなっている一方、迅速に乗客を輸送するには地理や道路事情を知っておくことが重要とされています。

未経験で大変なのは、道を暗記することそのものより、まだ分からない状態で乗客を乗せて走ることです。

目的地を言われる。

場所を確認する。

経路を考える。

必要ならナビへ入力する。

乗客から別の道を指定される。

それでも安全運転は続ける。

最初は一つひとつに時間がかかります。

ここは経験によって軽くなりやすい部分ですが、研修中に地理や営業エリアをどこまで教えてもらえるかで、乗務開始直後の負担は変わります。

接客の相手を選べない大変さもある

一人で運転する時間が長いため、「人間関係が少なくて楽そう」と考える人もいます。

確かに、上司や同僚と一日中同じ職場で働く仕事とは違います。

しかし、タクシーは接客業でもあります。

毎日さまざまな乗客を乗せるため、相手の希望を聞きながら対応しなければなりません。

普段は問題なくても、経路、料金、乗降場所などをめぐって説明が必要になる場面もあります。

事故やトラブルが起きた場合には、自分で最初の対応をする場面もあります。

「人とずっと一緒に働くのは苦手だが、短時間の接客なら問題ない」という人と、「知らない人から何か言われること自体が強いストレス」という人では、同じタクシー勤務でも感じ方が大きく違います。

売上が伸びない時間も乗務しなければならない

タクシー会社では、基本給などに加えて売上高に応じて給与が変わる歩合制度を採用している会社が多くあります。

そのため、乗客が続いている時間は仕事が進んでいる感覚がありますが、なかなか乗客を見つけられない時間は別の精神的負担が生まれます。

「どこへ行けば乗客がいるのか」

「このまま今日の売上が伸びなかったらどうするか」

と考えながら営業することになるからです。

これは荷物や仕事量が会社から最初に割り当てられる仕事とは違うところです。

ただし、現在は無線配車に加えて、位置情報を利用した配車やスマートフォンの配車アプリも広がっています。

どの程度自分で乗客を探す必要があるかは会社や営業地域によって違うため、転職前に確認しておきたい部分です。

身体を動かす仕事とは違う疲れ方がある

タクシーは荷物を何時間も運び続けるような肉体労働ではありません。

その代わり、長い時間車内で運転を続けます。

座っているから楽とは限らず、同じ姿勢で運転しながら周囲の車、歩行者、信号、乗客に注意を向け続けなければなりません。

乗客がいない時間でも、営業場所を探しながら運転する場合があります。

そのため、「体をあまり使わない仕事へ移りたい」という理由だけでタクシーを選ぶと、想像していた疲れ方との違いを感じる可能性があります。

転職前には、肉体労働かどうかではなく、「長い時間座って集中し続ける仕事が自分に合うか」で考えたほうがよいでしょう。

会社を選べば軽くできる「きつさ」もある

ここまで挙げた大変さが、すべての会社で同じとは限りません。

会社選びでかなり変わる部分があります。

たとえば隔日勤務が合わなくても、昼日勤を選べる会社なら生活リズムの問題を軽くできる可能性があります。

道に不安があるなら、乗務前研修や地理研修が充実した会社のほうが始めやすくなります。

乗客を自分で探すことに不安があるなら、無線や配車アプリからの依頼がどの程度あるかも比較材料になります。

事故やトラブルが心配なら、ドライブレコーダーや車内カメラなどの設備だけでなく、「事故が起きたとき誰に連絡し、会社がどこまで対応するのか」まで聞いておく必要があります。

「タクシーはきつい」と一括りにするより、何が会社によって変えられるのかを見たほうが転職先を選びやすくなります。

転職前は求人票より「実際の一勤務」を確認する

タクシーの仕事が自分にとってきついかどうかを判断するなら、求人票の「月収○万円」「月○日勤務」だけでは不十分です。

応募を考えている会社には、実際の勤務について具体的に聞いてみてください。

特に確認したいのは、一勤務の出庫時刻と帰庫時刻、休憩の取り方、1カ月の勤務例、未経験者が独り立ちするまでの研修内容、無線や配車アプリからの仕事の割合です。

できれば1社だけではなく、同じ地域の2~3社で聞き比べます。

そうすると、

「タクシーだから全部きつい」

のではなく、

「この会社の隔日勤務は自分には長すぎる」

「昼日勤なら続けられそう」

「配車が多い会社なら未経験でも始めやすそう」

というところまで具体化できます。

タクシー転職で知っておきたいのは、楽かきついかという評判ではありません。

一勤務の長さ、自己管理、経路判断、接客、営業という実際の大変さを知ったうえで、それを自分が続けられる働き方にできる会社があるかを確認することが重要です。

次に読む記事


勤務時間が心配なら、働き方を比較します。
→ 昼勤・夜勤・隔日勤務はどれがいい?タクシーの働き方を比較

睡眠が心配なら、生活リズムを確認します。
→ タクシー運転手は睡眠不足にならない?隔日勤務の生活リズム

体力が心配なら、長く続けられるか確認します。
→ タクシー運転手は体力的に何歳まで続けられる?

出典

厚生労働省|職業情報提供サイト(job tag) タクシー運転手
厚生労働省|ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示
厚生労働省|自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会|タクシー運転者の年収・労働時間